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VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

上野の森美術館|東京都

開催期間:

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今、油がのっている作家川内理香子、VOCA賞を受賞。その真髄はドローイングにある

 VOCA賞を受賞した川内理香子の作品の参考として、ギャラリーWAITING ROOMでの個展「Empty Volumes」(2021/11/27~12/26)について、鑑賞レポートを書きました。
 https://waitingroom.jp/exhibitions/empty-volumes/

 2014年第1回CAF賞保坂健二朗賞、2015年第9回 shiseido art egg賞、2021年TERRADA ART AWARD ファイナリスト・寺瀬由紀賞、そして今回のVOCA賞、今まさに油がのりにのっている作家のひとり、川内理香子。その真髄はドローイングである。

 ギャラリーWAITING ROOMで開催された川内理香子「Empty Volumes」は、針金による作品と陶による作品の個展。そのうちの針金による作品《watching TV》や《lying》は、裸婦のモチーフからしても、明らかにアンリ・マティスの一部の木炭デッサンを想起させる。
 マティスの木炭デッサンを見ると構図とフォルムを探った過程がよくわかる。木炭の線が幾本も引かれては消された跡が薄く残っている。しかし、その消し跡は決して裸婦の陰影を表現するためのものではない。それどころか、消し跡にマティスの油彩画のあの豪奢な色彩さえ感じる。その証拠に頭の中で最終的な線だけを残してイメージしてみよう。とたんに味気ないデッサンになってしまう。
 一方の川内の針金の作品は、まっさらのカンバスに曲げられた針金が貼り付けられたもの。針金はカンバスの表面からところどころ浮き上がっており、白いカンバス上に影を落としている。また、針金には構図とフォルムの試行錯誤の跡がぎこちない形として残っている。試しに頭の中でカンバス上の影を消し、針金をなめらかな曲線にイメージしてみよう。違いは歴然だ。針金の作品は影と、たどたどしい曲線によってこそはじめて表情豊かな表現となるのだ。そして観者は、そこに川内の油彩画やネオン管の作品のあの官能的な色彩をも見るに違いない。
 マティスの木炭デッサンも川内の針金作品もあえてひとくくりにドローイングと呼びたい。特に川内の場合は、水彩画はもちろん、針金作品も、陶作品も、ネオン管作品も、そして油彩画も全て——川内はそう呼んではいないようだが——ドローイングといっていい。つまり、それは川内は線と色彩を一体化させたことを意味している。
 マティスの最高傑作、ヴァンスのロザリオ礼拝堂を見れば明らかなように、マティスは近代絵画の基本要素である線と色彩を分離独立させたのに対し、川内はまさしく近代絵画の一端をそのように前進させたのだ。

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