新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション
京都国立近代美術館|京都府
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画風における変わるものと変わらないもの
このたびの新収蔵記念展覧会は、ごく展示期間が短いために、
遠方からは鑑賞の機会をえることが難しい物でしたが、まさに
待望の展覧会であることは間違いなく、それなりの無理をして
京都に来ることができました。平安神宮を向こうに見ながら、
美術館を目指すと、川に向かってチラシに用いられた作品が
お出迎えしており、期待はいやおうなく高まりました。
さて、岸田劉生といえば、白樺への親炙から、ゴッホによる感化、
そして、地理的な異同に伴うモチーフや画風の変化は、これまで
にも、いくらでも語られてきたストーリーだといって間違いない
でしょう。また、近代洋画科のシリーズとしては、桁違いといって
よい知名度を誇る麗子像シリーズについても、まさに美術ファンな
らずとも、ごく身近なものとして「見ればわかる」程度に流通して
いることは間違いありません。つまり、岸田劉生とは、よく知られ
た画家というばかりでなく、その作品についても広く知られた、日
本の近代洋画科としては、特権的な人物の1人であるのだ。
それでいて、なおこの展示が意義深いものであるとすれば、それは、
まさに、新収蔵として、岸田劉生作品が国立美術館にまとめられて、
それが一挙に展示される、ということにつきます。このことが意味す
るのは、上のストーリーを改めてたどり得るというばかりでなく、そ
の人生・画業全体を俯瞰する視点が、今回の展示の観覧によって得ら
れることにあるといえると思います。それが、コレクションが増える
ことの、まずもってのメリットなのです。
しかも、モチーフや描法において、珍しいものも展示されているため、
素朴に目が奪われる作品が次々と並ぶ展示会場は、贅沢と言ってよい
体験を、鑑賞者に約束してくれます。つづく常設展会場にも、岸田劉生
の敵と味方というキュレーションから、関連画家の作品が並べられてお
り、同時代の状況(絵画表現の幅や人間関係)までが一挙に学べます。
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