ミニマル/コンセプチュアル: ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術
兵庫県立美術館|兵庫県
開催期間: ~
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目と頭で楽しむアート
最近の作家が作った現代アートの展示だと思っていたのだが、1960〜1970年代の作品とあり、少し驚いた。作品もその制作工程やコンセプトが斬新に思えたから。今回はあえて展覧会の予習はせずに、展示室で鑑賞し、その後解説会に赴いた結果、思いの外夢中になってしまった。
例えば河原温の「I Got Up」はポストカードに毎日の起床時間をゴム印でスタンプしている。それは一見、無機質な数字と文字が「ある」だけなのだけれど、河原が毎日朝(たまに昼過ぎ)起きて起きた時間を押すという行為とその河原自身の存在感は作品を通して伝わっていくる。まさに生きている証し。
このような一見シンプルな作品をよく観察していくとそのコンセプトや思考の工程がじわじわ分かって来るのがこの展覧会の醍醐味かもしれない。これはデザインにも通じていて、シンプルなものほどコンセプトがよく練られている。
そして展示もとてもシンプルなのだけれど、配置のバランス、作品間の関連、観客の導線を考えられている。私たちは普段すでに展示されている作品を見られるが、展示風景は見ることができない。実際は学芸員たちがよりよい鑑賞をしてもらうために計算され試行錯誤を得て展覧会に至る。この展示風景を解説会では動画で解説される場面があった。展示をする側もミニマル/コンセプチュアルアートに参加しているように感じた。
展覧会鑑賞後はアートの見方、生き方について新しい視点を拓くことができたと思う。アート作品をみるということは自分自身にも問いかけ、生き方をも考え直すきっかけになるのかもしれない。目だけでなく、その作品のコンセプトをなぞっていくと新しい世界に出会える展覧会だった。