没後50年 鏑木清方展
東京国立近代美術館|東京都
開催期間: ~
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着物美人をアートウォッチ「没後50年 鏑木清方展」
東京で桜の開花宣言が発表された3月下旬、近代日本美人画家の巨匠、鏑木清方かぶらききよかた(1878年−1972年)
の大回顧展を皇居程近くの竹橋、東京国立近代美術館を訪問しました。
美人画家として「西の(上村)松園、東の清方」と讃えられた鏑木清方は東京出身。
とはいえ美人画家としての己について本人は
「需要があるのは美人画だけれども、自分の興味は生活にある。中層以下(庶民)の生活に最も惹かれる」
というようなコメントを残しており、今回の展覧会は美人画だけでなく、市井の人々の生活を描こうとした清方を紹介する
テーマを掲げています。美人画だけにとらわれない、初公開となる作品を含め日本画作品約110点がお目見えです。
この展示で面白いのは、いくつかの作品に作者の自己評価の☆がつけられてランキングになっているところ。
清方が残した制作記録のうち、8年分にだけ記された(気まぐれ?)3段階の自己採点をもとに、いくつかに☆の数がご紹介。
自己ミシュランというべきか斬新(笑)。
☆☆☆(会心の作)
☆☆(やや会心の作)
☆(まあまあ)
と、三ツ星制。
鑑賞に先立ち自分でも頑張って着てみた【着物】をテーマにいくつかピックアップ。
ピック①道成寺どうじょうじ 鷺娘さぎむすめ
1929年(昭和4)大谷コレクション※公開は~4/3迄
歌舞伎でも上演される日本舞踊の名作、道成寺と鷺娘がモチーフの作品。
歌舞伎のモチーフ作品をいくつも描いた清方のお気に入りテーマらしく、同じ題名で別作品が公開されるほどです。
満開の桜の下、赤地に薄紅の桜が描かれた振袖姿の白拍子の道成寺としんしんと降り積る白雪の中、真っ白な振袖姿の鷺娘。
赤と白、桜と雪の対比、そしてどこか人間離れした(実際人間じゃなくて大蛇と鷺の精霊ですが)美人、本当に美しいです。
思わず見入ってしまいますね!
ピック②築地明石町
1927(昭和2)年 東京国立近代美術館
近代美人画を代表する絵の一つ。ポスター採用の作品です。
1927年の第8回帝展で帝国美術院賞を受賞し、15円の記念切手に採用された代表作です。
これに昭和五年の作品「浜町河岸」、「新富町」とあわせて美人画三部作を構成していますが、実は2019年まで何十年も行方不明でした。奇跡の再公開です。
着物チェックさせていただくと、実際の東京で暮らす、タイプの異なる和服美女達は凄く生活感があるというか、現実的。
江戸小紋と呼ばれる細かな模様の着物や、縦ストライプの縞木綿の着物は、江戸時代の中期に流行って以降、
庶民の間で着続けられてきた仕事着(普段着) で、生活感が滲みます。①の舞台衣装のような華やかさとは対照的です。
ピック③芝居絵十二題
1925(大正15)年、京都国立近代美術館
「芝居通」で知られた鏑木清方のスケッチ的な小作品。軽やかな筆のタッチで歌舞伎の名シーンが切り取られています。
走り書きというのか、筆に迷いが無くて役者達が生き生きと描かれています。
作品は全て水彩か墨絵で、油絵や鉛筆と違ってやり直しきかないんですが、なぜこうも一瞬を絵に捉えることができるのか不思議です。
挿絵画家からスタートした清方は、日清~日露戦争、第一次世界大戦、関東大震災と太平洋戦争と、勘弁してくれと言いたくなる
激変する世相と災害続きの世界を生きていたのですが、見ている作品は生活感のある真逆の穏やかさで、なんだかちぐはぐにも思えます。
ところがその疑問にもちゃんと答えが。
「戦争などで世相が不穏になると、ひそかなる反抗としてことさら美人画を描いていた」と話す本人の音声が会場で流れているのです。
--------穏やかなる反骨の志、素敵な鏑木清方の世界に浸りました。
会場: 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
会期: 2022年3月18日(金)~5月8日(日)
休館日: 月曜[ただし3月21日、28日、5月2日は開館]、3月22日(火)
開場時間: 9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)
同展は一部展示作品と構成を替えて5月27日から京都でも開催されます。
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