サンセット/サンライズ
豊田市美術館|愛知県
開催期間: ~
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コレクション展なのに、凝った構成の日本現代美術作品展
日本の現代美術作品を柱とした、豊田市美術館自身のコレクション展。「サンセット/サンライズ」と題されているが、別に日の出日の入りの作品「だけ」を集めたわけではない。この統一テーマの下、①マジックアワー(日没日の出前後の薄明の時を意味する)、②眠り/目覚め、③死/生、④見えない/見える、⑤黒/白、⑥終わり/始まり、以上の6章建てに構成されている。なかなか凝った構成で、キュレーターの意図も、比較的わかりやすい。単なるコレクション展に終わらせないのが、多数の客を呼ぶ理由だろう。展示作品には、ダリ、エゴンシーレ等もあるが、大半は日本人作家。奈良美智、杉本博司、草間彌生と、著名な日本人作家の作品がならび、河原温、白髪一雄、元永定正、荒木経惟とまで見ていくと、120点余の壮大な日本現代美術絵巻の印象。絵画だけでなく、写真や動画作品までを含んでいて、現代の特徴のひとつと思われる表現方法の多様性も、しっかり織り込んでいる。さすが。個人的には、横山奈美作品の可愛さが印象に残った。
こういった多くの作品のなかでも、特に目を惹いたのは、メインビジュアルにもなっている小林孝亘作品が、各チャプターに振り分けられ、最後の展示室に新作、それも大作ばかりが8点並ぶのは、圧巻。新作はマグリットの澄んだ色を思わせる素晴らしいものだった。この方、作風に変遷があるようで、それをしっかり感じることができたのは、6章の展示構成の賜物かも。
このように展示構成がしっかりしていたせいか、展示順と違う方に行くと、展示室の係が、こちらですよ、と声をかけてくる。それ自体は、まあ一生懸命さのあらわれなのかとも思える。ただ、残念だったのは、エレベーターを使う客の誘導に全く配慮がないこと。エレベーターが展示室と展示室の間にあり、構造上どうやっても館が予定した順路通りにいかないはずなのだが、係は、不規則な動きをすると思うのか、順路はあちらからですと声をかけてくる。そんなに順路通りに見せたいなら、エレベーター客用に順路図でも作ってエレベーターにおいて欲しいくらい。当日、私は足裏を怪我していて体重のかかる階段は難しく、少しでも歩く距離を減らしたかったから、作品群が個々に素晴らしいだけに、声かけが相互に矛盾するのが気になった。階段を上らない方は、寛容に。
この美術館は、展示のあとにも更に楽しみがある。それが眺めのよいレストランと豊富な書籍を集めたミュージアムショップ。美味なランチか、ケーキセットで余韻に浸る贅沢は、なかなかのもの。アヴァンギャルドなコンセプトデザートには、毎回ビックリするが、レストランのInstagramで事前にチェックできる。
今回は、チケットをアートアジェンダからプレゼントしていただいたので行ってみようかという程度だったが、本当に見てよかった。大満足の展覧会、キュレーターとチケプレに感謝。