上田薫とリアルな絵画
茨城県近代美術館|茨城県
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リアルとはなんだろう
展示作品を見て、リアルとはなんだろうと改めて考えることになった。
上田薫作品は初めて鑑賞するが、フライヤーにあるなま玉子を割った瞬間の絵が目を引く。
1970年代の作品とのことだ。
当時、カメラはあるが、現像する必要があるので、スマホやデジカメで撮影できる今ほどは気軽に瞬間を捉えることはなかっただろう。
「なま玉子 B」は実際は人と同じぐらいの大きな絵だ。
写真ではないことを確かめるため、近寄ってじっと見つめる。
確かに近くで見ると、絵の具の跡がわかり、絵であることがわかる。
そのまま今度は離れてみると、写真のように思える。
目が騙されている不思議な感覚で、近寄ったり遠ざかったりして鑑賞した。
特に白身の部分をどのように描いているのか、不思議だった。
他にもリアルな絵画が。
「アイスクリーム A」はスプーンに乗ったアイスクリームが美味しそうで、口の中にバニラが広がった気がした。
「ジェリーにナイフ C」「ジェリーにスプーン D」はジェリーの触感や香りを感じられそう。
「流れ C」どうみても水の流れを写真に収めたようにしか見えない。どのように色をおけばこのようなリアルだと思う表現になるのだろう。
他の作者のリアルな絵もある。
三尾公三「蒼天の刻」はベッドに顔があることで空想上の絵だとわかる。
横山奈美「The History of Weastern Painting」はコードを指したらネオンサインが輝るのではないかと思った。
光の反射や銀色のスプーンなどの光沢など絵の具で表現できるというのが驚き。
近くでみると色を分解して見られるが、どのように色を置けば写真で撮ったようになるのか。
でも、考えると、そもそも写真も本物ではない。分解してみればやはり色の組み合わせにすぎない。本物があるわけではないのに、目が、脳が騙される。
おそらく、明治時代に印象派などの洋画を見た人々はリアルに感じただろう。
もしかしたら、その延長がこのスーパーリアリズムなのかもしれない。そして、当時の人たちのように、今、リアルをこの絵画たちに感じている。