小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌
東京ステーションギャラリー|東京都
開催期間: ~
- VIEW961
- THANKS3
「旅する画家」の作品で歴史を旅する
初めて鑑賞する小早川秋聲。
明治生まれで大正・昭和と活躍した日本画家とのこと。
なぜ今まで目にする機会がなかったのかと思ってましたが、
今回の所蔵先をみると個人蔵が多く、ほかは京都や鳥取など西日本の美術館所蔵でした。
東京ステーションギャラリーで今回、鑑賞できて嬉しいです。
■旅する画家として
旅先の景色を描いているが、日本だけでもどれだけ旅したのだろうか。
・裏日本所見畫譜
山陰地方を旅した際に各地を描いている。
大山など行ったことあるが、写真を撮る代わりに自分で描けるのはいいなあと思う。
・印度 ダジ・マハールの満月
・エジプト ミイラの回想
・米国 グランドキャニオン 暁月
異国の風景に感銘を受けたのだろうなあと想像します。
今よりも交通も情報もない中で、このような風景に出会いに行くのは困難だったろうが、旅を愛する人はそれでも行って見てみたくなるのだろうなあ。
また、西洋の文化を吸収して描いたと思われる作品もいいなと思う。
・長崎へ航く
オランダから長崎へと出航する船とそれを見守る女性たち。女性の洋服の柄がいちいち細かくて美しい。実際に布を取り寄せて描きこんだもよう。
・恋知り初めて
憂いを持った女性の横顔。すらっとした女性が西洋的。壁にかかっている絵画東海道五十三次が細かく描きこまれている。あとから藤田嗣治っぽい雰囲気あったかもと思いました。
■従軍画家として
第1次世界大戦後、アメリカの対日感情を好転させる一つの施策で、日本美術の紹介のため小早川秋聲はアメリカへと派遣されたとのこと。
世界を旅して目にしてきて、戦争へと向かっていく日本の姿をどんな思いでいたのだろうか。
・國之楯
日章旗を頭にかけられ、横たわる兵隊の遺体。まさに國之楯になった一人を描いたものだ。この横たわっている人が、自分の祖父やその友人だった可能性もある。この作品を残して公開してもらえてよかった。
学生のころ美術の授業で、戦争画はまだ批判などもあり評価が難しく、なかなか表に出すことができないと聞いた。ようやく鑑賞できるようになってきたのかなと思う。
「國之楯」も現在の作品は、戦後に改作したもので、桜の花びらが積もっていたものを塗りつぶしている。
小早川秋聲自身、戦後逮捕されることも覚悟したという。
他にも、初期の那須与一を描いた「譽之的」や晩年のたくさんの踊る人々がいる「天下和順」など心惹かれる作品が多々ありました。
大正・昭和と戦争の多い時代に描いてきて、今その時代に思いを馳せることができました。