
~異国の旅と記憶~ 東郷青児 蔵出しコレクション
SOMPO美術館|東京都
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東郷青児に馴染みのない人でも楽しめる、東郷青児を発見する
アートアジェンダのチケットプレゼントに当選し、新装後初めてのSOMPO美術館へ。
新しく出来た美術館はモダンで明るい内装が印象的。
東郷青児というと切れ長の目の美しい女性の画にプレイボーイというイメージでしたが、旅をすることと新しいことが大好きな人だったのだと知ることができました。また旅や交流のある作家に影響を受けて自分の作品に取り入れる柔軟な発想の持ち主だったのではと思いました。
以下、気になった作品。
「舞」は仏像にインスパイアされたとのこと。展示内にも仏像とエロティシズムの関連が語られています。仏像を人物化したかのような作品に、まさに今の感覚を感じました。
「望郷」は少しうつむいた横顔が印象的。高度経済成長期に書かれた作品、失われていくものや戸惑いのようなものがあったのでしょうか。
フランスに住んでいた戦前と比較すると決して海外旅行が容易ではなくなった戦後、それでも海外を訪れたそうです。中でもサハラ方面やマラケシュなどには複数回旅をしているそう。「赤い砂」は白い衣の男性が印象的。薄っすらと微笑んでいるような姿、今見てもモダンでシンプル、心に残ります。
旅先でのスケッチはまるでファッション誌のようにおしゃれ。人の服装に興味があったのでしょうか。人物の詳細なスケッチは人の内面まで表しているようです。
また設立に合わせて東郷氏と交流のあった画家のリトグラフが所蔵されたとのこと、美しい作品に「Pour Monsieur Togo」から始まる美しいメッセージ付き、お人柄が偲ばれる展示です。
構図や滑らかな作風はキュビズムやフォービズム、現代というような枠にはまらない気がします。人物を浮き上がらせるための工夫だったのでは。「理論より楽しみたい」との氏の言葉通り、予備知識なしに東郷さんの作品を楽しんでも良いのだなと思います。
絵筆の跡がないような作風はどこからきたのか、と作品を見ながら疑問に思っていました。レオナール藤田とも交友があったことが展示からもわかりますが、二人の画風の共通点を感じました。
驚いたのは、画家と並行して二科展の運営や海外美術展との交流にここまで尽力なさっていたことです。画家としてだけではなく文化交流のハブになっていたことを初めて知りました。
しかし、冒頭のトランクとイーゼルの展示、後年の油絵の具を立体的に載せるという作風の転換の展示から生涯現役画家であったことを示しているようでした。
美しく優しい展覧会でした。
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