千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念 宮島達男 クロニクル 1995−2020
千葉市美術館|千葉県
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「宮島達男|クロニクル 1995-2020」(9/19~12/13・千葉市美術館)初日を見る。
「宮島達男|クロニクル 1995-2020」(9/19~12/13・千葉市美術館)。本日初日。
宮島達男(1957―)は東京都出身の現代美術作家。デジタル・カウンターを駆使した作品により、世界中で高い評価を得ている。展覧会も国内外で多数。1996年、ここ千葉市美術館の開館記念展として「Tranquility―静謐」(宮島達男、杉本博司、ニエレ・トローニ、ミシェル・ヴェルジュ、マリア・ノルトマンの5人によるグループ展)が開かれており、今回はそれを受けての拡張リニューアルオープン・開館25周年記念展。小生残念ながらその展覧会は見ておらず、個展として見たのは2011年福岡・三菱地所アルティアムで開かれた「宮島達男展」。
会場はいつもの8階から。まずは略歴から。1957年、東京都江戸川区生まれ。1984年、東京藝術大学美術学部油絵科卒業。1986年、同大学大学院美術研究科絵画専攻終了。1987年、LEDの作品を初めて発表。1988年、ヴェネツィア・ビエンナーレのアベルト88(若手作家部門)に作品『Sea of Time』を出品し、高い評価を得る。1990年、ニューヨーク、それからベルリンに転居。1992年、帰国。1999年、ヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表として参加。2006年、東北芸術工科大学副学長に就任。2011年、東日本大震災。2014年、京都造形大学副学長も兼任。2016年、両校を退職し、それぞれの客員教授に。展示室は『Counter Skin on Faces』(2019/2020年)から。横向きの大きなスクリーン3面があり、顔に赤、黒、白が塗られた女性の顔の映像。描き抜かれた数字がカウントダウンされてゆく。横には板キャンにアクリルで描かれ、DVDが6枚貼り付けられたタブロー。これも含めて全体で1つの作品のようだ。次の空間にも3面のスクリーン作品『Counter Voice in Wine』(2000/2020年)。イギリス、スペイン、フランスの国籍を持つ男女3人の前には透明のボウルが置かれ、その中に赤ワイン各4本分ずつ注がれる。それぞれの言語でカウントダウンを発し、0の時は無言で赤ワインに顔を沈める。みるみる赤く染まってゆく白い着衣。苦しそうだ。横にはその時女性2人が着ていた白シャツの展示。それには宮島の署名、落款が入っている。3つめの空間には1つの大きなスクリーン作品『Counter Voice in Chinese ink』(2018/2020年)。竹林をバックに今度は宮島自身が墨汁に顔を付けながら、カウントダウンを行っている。途中からやけになったか、涙声に。こちらにも墨汁の染み込んだシャツの展示がある。これらの映像作品には時間の明記が無く全部は見なかったのだが、服の汚れ具合から言って結構長い時間やっていたよう。次の空間には人体に描かれたナンバーを写したプリント作品。室内で撮影されたものが6点、室外で撮影されたものが9点。室外で撮られたものには広島・原爆ドーム前や沖縄・平和祈念公園前でのものがあるから、そういう意味合いを帯びさせているのだろう。折角だから9、8、7、6、5……となるように作品を選び、並べれば良いのに、とは思った。さて次の空間、美術館北西角の窓ガラス2枚に設えられたのが『Counter Window No.3』と『Counter Window No.5』(いずれのも2003年)。デジタル・カウントダウン作品だ。これらは撮影可。個人的には割と好きな作品であった。その横のやや広い空間には『Dearthclock for participation』(2005-2018年)。1990年代以降、『Death of Time』(1990-1992年)、『MEGA DEATH』(1999年)と発表し続けた‘死の三部作’の第3弾作品だ。作品購入者は自分の‘死の時’を設定・入力し、その時顔写真を撮る。コンピュータのスクリーン上では顔写真の上に被さってデジタル・カウンターがカウントダウンを始める。0になるまで。中央には大きなスクリーンがあり、その左右にはそれに参加した60名の写真とナンバー。空間の中央にはそれに参加する為のブースらしきものがあるから参加ないし疑似参加できるのだろうと思われるが、先客がいたのでパスする(興味のある方は、時間に余裕をもって訪問されたい)。ちなみに宮島のカウントダウンには0は発せられず。‘無’や‘死’を意味するのだそうだ。次の空間には『時の蘇生・柿の木プロジェクト』作品の紹介。これは1995年に長崎を訪れた宮島が、樹木医・海老沼正幸の活動を知って始めた被爆柿の木2世の苗木を世界各地に植樹する運動。被爆柿の木2世をブロンズで型取りしたものやモニター3台、ストーリー画15枚やパネル14枚でその活動を紹介する。次の展示室へ。今回の展覧会の為の新作『Changing Time/Changing Art』(2020年)。と言っても展示ガラスケース全体にナンバーの抜かれた銀のシールが貼られ、そのナンバー部分から現代作家の河原温、中西夏之、菅井汲、李禹煥、杉本博司の作品(千葉市美術館蔵のもの)を見るという趣向の作品だ。28点、その他5点。
下の7階へ。1990年代より、宮島は紙幣や楽譜、古い着物などさまざまなものにドローイングした作品を発表する。この展示室にはそんな作品の紹介。『Over Economy by YEN 50,000』(2013年)は日本の1何円札5枚に数字を描いた作品。『Counter Painting on KIMONO OBI-RED』(2013年)は古い着物の帯に赤いアクリル絵具で数字を描いた作品。壁に16枚のパネルを用いての1995年から2020年までの年譜がある。上段8枚が英語表記で、下段8枚が日本語表記。重要な個展で無かったのか、小生が2011年三菱地所アルティアムで見た展覧会が記載されていない。ショック!次の広い展示室には宮島らしいデジタル・カウンターを使用した作品が壁にずらり11点。これらは全て撮影可だったので、閑散とした展示室内で写真を撮りながら鑑賞する。『C.T.C.S.Flower Dance no.4』(2017年)は鏡3×3=9枚の鏡に赤いデジタル・カウンター。『Life (le corps sans organs)-no.13』と『Life (le corps sans organs)-no.18』(いずれも2013年)はデジタル・カウンターのユニットが緩やかにコードで繋がれた作品。『Life (Ku-Wall)-no.6』(2014年)は正方形のモニターに現れる誰も変化が予想できない緑のナンバー。『innumerable Life/Buddha MMD-03』(2019年)は50×50=2,500個の赤いLEDが並べられた作品。チラシの裏面や1階エレベーター片方の全面貼りに採用されている。色味が赤なので、展示室内で一番強烈。『Time Train to Auschwitz -no.1』と『Time Train to Auschwitz -no.3』(いずれも2008年)は鉄道模型の上に青いLEDが取り付けられた作品。模型がドイツ・フライシュマン社製ということでホロスコートによるユダヤ人大虐殺を連想させる作品らしいのだが、出品目録に付く解説を読まなければそれは判らない。『C.F.Lifestructurism -no.18』(2009年)は5×17の針金の目に白のナンバー。『C.F.Plateaux -no.7』(2007年)はランダムに針金がクロスされ、そこに灯される青のナンバー。『Diamond in You No.17』(2010年)は三角形のステンレス鏡が組み合わされた中に赤、青、緑のナンバー。近未来的作品だ。『C.T.C.S. Flower Dance no.9』(2017年)は3つの鏡に青のナンバーのある作品。角度が微妙で真直ぐ正対ではないようだ。次の通常は展示室と展示室を繋ぐ通路及びその横の休憩スペースに最新作が2点。『HITEN -no.11』(2020年)は24個の小さな棚にそれぞれナンバーを置いた作品。そのナンバーの色はこれまでのものとは異なる薄いポップなもの。これは女性にうけそうだ(小生も割と好き)。この階最後の展示室は暗く、そこには『地の天』(1996年)。直径9m60cmの円形のプールのような形状に、青のナンバーが散りばめられる。看板、ポスター、チラシ、半券などに採用されているのは、おそらくこの作品の部分。1996年の「Tranquility―静謐」で発表され、ここ千葉市美術館の収蔵品となった。見晴らし台があるので、その上に上って眺める。星が散らばる宇宙のようで美しい。一見の価値あり。この階25点。
1階のさや堂ホールへ。『Floating Time』(2000年)はホールの床に青、赤、黄の大きな四角形の光が当てられ、そこにナンバーが浮遊する。そのナンバーを踏むと数字が変化するようだ。1点。
以上54点、その他5点。期待を裏切らない、宮島達男の仕事を通観する展覧会。とても面白かった。宮島達男、見ていない人はぜひぜひ。ショップは1階に移動しており、宮島関係のグッズとしては過去の図録、書籍、ポストカード、ポスター、DVD、ステッカー、折り紙、キーホルダー、缶バッチ、Tシャツ、バンダナ、ストッキングの販売。今回の図録は只今制作中とのこと。あれま。
千葉市美術館「宮島達男|クロニクル 1995-2020」、これも良い展覧会でありました。
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