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山本理顕展 コミュニティーと建築

山本理顕展 コミュニティーと建築

横須賀美術館|神奈川県

開催期間:

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澄んだ箱と眼前の海:山本建築が問いかける空間の哲学

 ART AGENDA様にいただいたチケットで、横須賀美術館にて開催されている「山本理顕展」へ出向いた。東京湾を目の前に臨み、自然に囲まれた三浦半島でも屈指の景勝地・観音崎公園に位置するこの美術館は、私のお気に入りの美術館でもある。
 代表作であるこの横須賀美術館を舞台に、世界的建築家・山本理顕の50年にわたる設計活動を振り返る、過去最大規模の回顧展である。進行中や落選したプロジェクトも含め、約60点の模型や図面が展示されており、建築が単なる物理的構造ではなく、社会との関係性を築く「場」であることを強く訴えている。
 山本は建築における「パブリック」と「プライベート」の境界を「閾(しきい)」と呼び、その曖昧な領域にこそコミュニティの可能性が宿ると考えている。この思想は、政治哲学者ハンナ・アレントの著作『人間の条件』に登場する「ノーマンズランド(無人地帯)」の概念と深く結びついている。展示室の白壁のところどころに、この『人間の条件』の一文がキャプションとして掲げられ、模型と交錯するように配置されていた。山本はこの「ノーマンズランド」を建築における「閾」として実践し、個人と社会のあいだにある空間を設計することで、建築を通じたコミュニティの創出を目指してきたのだという。難しいことを理解できたわけではないが、山本建築に身を置くことで、思想の輪郭にふれるような感覚があった。
 最も印象的だった作品のひとつが、スイス・チューリッヒ空港の複合施設「The Circle」(フライヤーにも使用されている)。世界一美しい空港のひとつと称されるこの建築は、都市と自然、公共と私的の境界を柔らかく溶かし込むような設計が特徴で、山本の思想が国際的にも高く評価されていることを物語っている。本当に息をのむような美しさで、ぜひとも足を運んでみたいと思った。
 横須賀美術館の眼前には海が広がっている。館前の芝生に腰を下ろすと時間が止まったかのように、いつまでもその風景を眺めていられる。私たちは風景と一体となり、世界との関係性を再発見する機会を与えられる。その瞬間、建築は哲学となり、問いかける。「人はどこに属し、どこに開かれているのか?」
 この展覧会は、建築が哲学と社会をつなぐ「思考の場」であることを教えてくれる。空間を通じて人間の条件を問い直す山本理顕の建築は、私たちに「住まうこと」の意味を再考させる。建築とは、未来の住人のために開かれた、見えない世界への入り口なのかもしれない。そして、『人間の条件』読まなくては。

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