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みんぱく創設50周年記念特別展「民具のミカタ博覧会―見つけて、みつめて、知恵の素」

みんぱく創設50周年記念特別展「民具のミカタ博覧会―見つけて、みつめて、知恵の素」

国立民族学博物館|大阪府

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祝 太陽の塔重文指定

今年上期の展覧会キーワードは、蔦重と国宝ですね。
蔦重は全国各地の美術館で浮世絵展が目白押し、国宝は関西万博絡みで西に特別展が集中開催中です。
私も京都・大阪・奈良にGW明けてから大遠征してまいりました。レビューはおいおい書くとして、まずは民博から始めます。
訪問は5月17日。その前日になんと、太陽の塔が重要文化財に指定されたとのBIGニュースが飛び込んできました。
万博公園入門ゲートへは雨の中ものすごい人の波。皆さん昨日のニュース見ての表敬訪問かと思いきや屋外音楽フェスへ向かうかたがたでありました。
私は人影もない巨大な塔の真横を通って、心の中で太郎さんへのお祝いを申し上げながら民博へと進みました。

民博で開催中の展覧会は、「民具」と「アラビア書道」の二つ。前者が別館での特別展、後者が本館での企画展です。
最初に別館に入って「民具のミカタ博覧会」から。当展は民博創設50周年記念展だそうですが、実はこれも万博絡みの企画です。
というのは、ここに出ている民具のうち民博所有のものは、1970年大阪万博での展示用に収集されたものなのです。
その実務を担ったのは「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団」、EXPO'70 Ethnological Mission、通称EEMでした。
EEMは1968年から1年間かけて世界各国を飛び回って民族資料を収集し、本番の万博での展示会場は太陽の塔の内部だったというのですから、今回の太陽の塔の重文指定も当展開催に華を添えたといえるのではないでしょうか。
EEMコレクションは、民博の常設展示にも当然たくさんあるでしょうし、当展においてはそのごくごく一部が紹介されています。

そして当展での展示品のうち、日本のものが「ムサビ・コレクション」からやってきた品々です。これがすごい。
というのも、その収集のリーダーであったのが、宮本常一なのです。
彼がムサビの教授であった時代に学生や協力者たちと共に全国から集めた民具は膨大なものであり、それがムサビ・コレクションとして保管されているのです。
郷土の大先輩として宮本の名と業績は大まかには知っていましたが、ムサビで教鞭をとっていたこと、そして「民具」といういわば民俗学の現物収集も行っていたことまでは、恥ずかしながら知りませんでした。

当展出展品は、海外のものがEEM、国内のものがムサビからで、展示の章立ては「かたちと身体性」、「ユーモアと図案」、「見立てと表象」の3章からなっています。
そして、小学生でも理解が深められるようにと「ミカタ」のポイントが5つ示されます。すなわち、
1.どれだけ手間がかかっているか?
2.素材は何か?
3.どんな模様が描かれているか?
4.どうやって使うか?
5.何が表現されているか?

民博ですから当展に限らず「見方のポイント」はいつもわかりやすく的確です。
今回も展示レイアウトをまず、EEMは丸い台、ムサビは四角い台にして大分類し、EEMのものについては、現物と併せて大きな写真も掲示して解説が為されています。
章立てはあるものの、会場は動線指定のない回遊型の配置で、客は目の前にある民具を気楽に面白く見ることができます。
そこには上記5つのミカタのポイントのうちどれかが示されているので楽しく学べるという寸法です。

ここまで書いて、果たして当展の面白さがどこまで伝わったかは甚だ疑問ですね(笑)
てゆーか、こんな堅苦しいこと書いてたんじゃレビュー失格です。とにかく当展は、来て、見て、感じて、想像して、楽しむことが一番です。
ほんとは手に取ってそのブツを本来の使い方で使ってみる、遊んでみることができたら最高なのですが、そうもいかないのだけが玉にキズ(笑)

日本各地のおろし金なんてのは、キャプションに大根おろし用と書いてあるのでいいのですが、ルーマニアのおろし金はチーズ用だそう。
最近のイタメシ屋さんで山のようにチーズをおろすシーンを見たりしますが、これもあんな感じなのかな。
あるいは、神戸人形。どんな動きをするのか興味津々。スイカ食べたり徳利と杯で酒を飲んだり鼓を打ったりする映像が見たかったです。

日用品とか玩具なんかは、まあこうやって使ったり遊んだりするんだろうと想像つくし、儀式や呪術に用いる仮面、御札、神像のタグイも、民博だからこそここにあるんだろうなと、畏敬の思いもあります。
でもやはりこれらは、権力者や為政者が扱う特別なものじゃなく、民衆が手にする「民具」ばかり。だからこそ、民具の親しみやすさが触らずとも「手に取るようにわかる」のだと思います。

それでも謎なものもありました。二つあっていずれも東北地方のもの。
一つが、山形県西村山郡のトコトコ人形。
藁を人形(ひとがた)に見立てた玩具なんですが、それを単に持って遊ぶだけなのか、飾って見るだけなのか、素朴の極みみたいな玩具です。
もう一つが、岩手県花巻&遠野のキナキナ。
これは絵のないこけし。白木をこけしの形に削り出しただけのもので、不思議な存在感があります。

3月末に始まった当展、すでに会期は残すところ十数日。行く価値アリアリの超オススメ展覧会ですので、太陽の塔の重文お祝いも兼ねてご来館あれ。
私は今回こそ常設展もとことん見てやるぞと朝の10時から意気込んで来ましたが、またまたセミナーがあるとのことでそっちで2時間費やしてしまい、気づいたときには閉館時間になってました。
「アラビア書道展」については、別稿で。

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