3.0
建築以外のル・コルビュジェを知ることの出来る珍しい機会ではありました。
ル・コルビュジエは、20世紀を代表する建築家で、2016年に「国立西洋美術館」を含めた17の資産が、世界文化遺産として登録されたことは記憶に新しいですよね。若い頃少しばかり乍ら、建築設計を学びその仕事に関わった私にとっては、好みは別として、あまりにもビッグな存在です。装飾の極めて少ない、合理性を追求した鉄筋コンクリート製の建造物を代表作とし、「モダニズム建築」の提唱者としても知られていますが、1960年代に盛んになったモダニズム建築の原型を、既に1920年代に実現していて、まさに時代の先駆者でした。そんなコルビュジエは、建築を始めるより以前から画家として活動していたことや、建築に関わって以降も、建築・家具・都市計画などだけでなく、意欲的に、水彩画・油彩画、彫刻、書籍に至るまで幅広い分野で作品を多く残したこと、は一応知っていました。作品は2019年国立西洋美術館「ル・コルビュジェ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」などでも観たことはありました。その時の印象は、あまり好みではないと思っていたコルビュジェ絵画も、割と面白いかも‥、でした。そんなコルビュジェの絵画作品が多数、今回大成建設のコレクションとして、大倉集古館で紹介されているとのことでした。神谷町でモビールの「カルダー展」を観るついでで一応、 チケットを買い出かけてみました。
平日午後、会場は割合観覧者がいらしていました。ギャラリートークのようなものも行われていて、ちらりちらりと解説を聞いたりしながら観させて頂きました。
全く個人的な好みの問題なのですが、全体として「あまり好みではない」感の復活になってしまいました。若い頃のピュリスムは、ル・コルビュジェになる頃からはすっかり消えました。ちょっと意外だったのは、彼は新しい建築様式を打ち立てたり、人体の「モデュロール」からの家具や空間設計をするなど、そして「人を幸せにする建築」を目指すなどの人であったと思いきや、絵画では、かなりあちこちに影響されて、時代の流行に揺り動かされ変遷を繰り返している感じでした。物との距離には踏み込んで行くのに、光や解放された空間を大切にしているのに、生い立ちや家庭環境からの影響でしょうか、人との距離のとり方踏み込み方、心の解放の仕方は、やや不得手だったのではなどと思ってしまいました。今回の大成コレクションの作品からは、… Read More