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日本写真史の徒花としての手彩色写真
モノクロ写真をプリントして、そこに色を塗ったものが手彩色写真です。いわゆる一点物です。幕末から明治にかけて、来日外国人向けの土産物として制作されたそうです。今ならカラーで撮るのは当たり前ですが、一般向けにカラーフィルムが登場するのは1935年(昭和10年)ですから、明治前半の頃は、色の付いた写真というのは手彩色写真しかなかったわけです。
手彩色写真を写真の歴史展示でひとつのコーナーとして目にすることがあっても、これだけの数をまとめて見るのは初めて。そして、そもそも手彩色写真にフォーカスした展覧会も初めてみたので、前売り買って行ってきました。
以下、初めて知ったことは
・訪日外国人向けの土産物として制作した作品はプリントも大判で、通常の4倍のサイズ。
・そういった写真をまとめてアルバムにして、表紙を蒔絵で飾って売った。
・一方で、明治22年(1889年)からコロタイプ印刷が普及して、手彩色は市場から撤退した。
というあたりです。日本写真史の徒花って感じです。まあ得てして徒花は美しいのだけど。
作品は丁寧に作られているし、その構図も面白く、モデルの質も高い。今となっては、制作者は分かっても、モデルが誰なのか、彩色したのは誰かも分からない作品が多いのですが、この辺が明らかになると小説のネタになりそう。
また、今回の展示作品は神戸市立博物館の収蔵品のほかに、横浜開港資料館や東京都写真美術館、長崎大学付属図書館といったところの収蔵品でした。やはり海外からの方々が住んでいたあたりが多いのね、という感じです。それと写真家でコレクターとしても有名なピエール・セルネさんの所蔵品もかなりありました。これも興味深いところ。ピエール・セルネさんの名前も覚えておこうという気になりました。
ちなみに展示替えありで、写真撮影不可。