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広重、新発見!
私はNHKプラスのヘビーユーザーなんですが、このところ広重推しの番組がやたら多くて…。片っ端から見ているうちに、「あべのハルカス、20時までやってるじゃん!」と気づいて、遠征の最後にねじ込みました。
「広重=東海道五十三次」のイメージしかなかったので、シリーズものを多く刊行していたのに驚きました。面白い作品がたくさんあるのに、東海道五十三次しか教科書に載ってないのがもったいない!
おかげで、多くの展示作品に新しい気持ちで向き合うことになりましたよ。
気になった作品はいろいろありました。
まずは一文字ぼかしが面白かったのが2点。
「本朝名所 駿州富士川渡船之図」は一文字ぼかしが黄色!黄色のばかしは初めて見たけど、奇を衒った構図の絵でもないのに不風景と色が思議と調和してる。これは摺師さんの手柄かもしれない。
「東海道五十三次之内 原 朝之富士」は赤の一文字ぼかしを富士山が突き破る構図。ぼかしの意味ないじゃんと思いながら、ルール破りの面白さがありました。
国芳っぽいと思ったのも2点。
「酒吞童子」は酒吞童子とその眷属の衣や体に幾何学模様を施している。一色で摺ればいいのに、細部へのこだわりが感じられます。
「平清盛怪異を見る図」は庭の木に積もった雪を骸骨に見立てて清盛を脅かしているのが面白い。枝の細い部分まで丁寧に骸骨の形に描かれています。
他にも、橋の下に月が見える「甲陽猿橋之図」とか、不思議な着物を着ている「江戸名所四季の眺 高輪月の景」とか、初めて見るものばかりで、ついつい長居をしてしまいました。
そして、なんといっても初摺の発色が美しい。色も線もぼけた感じがまったくない!肉筆画のような状態のものを見てしまうと、これから他の場所で見る作品に満足できなくなりそうでコワいですね。
実際、この展覧会を見た3日後に都内で「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」を見たんですが、まったくの別物!悲しいやら、うれしいやら。