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これがキュビスム?
この展覧会では「日本におけるキュビスム」のタイトルの下、90名以上の日本人画家の絵が展示されています。日本にこんなにたくさんのキュビスム画家がいたのかと驚きましたが、その多くは私には馴染みのない名前です。しかしながら、東郷青児、萬鐵五郎、古賀春江、松本竣介、岡本太郎など有名画家の名も含まれています。前期のみの展示のため今回は観られませんでしたが、日本画家の高山辰雄の名まで含まれています。彼らがキュビスム画家のはずがないと思いますが、今回の展覧会では、一度でもキュビスム風の絵を描いたことがある画家の作品をかき集めたようです。1910年代から20年代にかけて日本にキュビスムが伝えられ、多くの画家が実験的に試行し、戦後はピカソの影響で、キュビスム風の絵画を描くのが流行したので、キュビスム風の作品はたくさん残されているようです。これらの作品を一堂に集めるには相当の労力が費やされたものと思われます。リストを見ると、全国各地の国立・公立・私立の45美術館のほか大学、企業、個人等から200点あまりの絵画・関連資料が集められ展示されています。関係者の苦労が忍ばれます。
さて、画家本人がキュビスムを意識していたかどうかにかかわらず、キュビスム風の作品を集めたようですので、どこがキュビスムかと首を傾げる作品も多かったですが、いろいろな作風の絵画が観られ大変楽しめました。
特にオススメなのが、佐藤敬の「水災に就いて」と山本敬輔の「ヒロシマ」の2作品です。いずれもピカソの「ゲルニカ」の影響を受けたと思われる大作で、岡本太郎の「明日の神話」には太刀打ちできませんが、それなりの存在感を示しています。そのほか、ラスコー洞窟の壁画風の井上三綱の「駆けだした牛」等、面白い作品が並んでいます。閉会が迫っていますが、一見の価値があります。