5.0
「対極」なるものをつなぐファッションの力
ファッションデザイナー、コシノジュンコの「原点から現点」を年代記的に辿りながら、その創造性を紐解いていく本展。相対するものを共存させるコシノの「対極」的な表現は、両者の可能性を引き出す成功例を数々生み出してきた。
どちらかというと空想的かつ未来的な造形性が際立つ彼女の作品は、先端的であるがゆえ非時代的でもある。着物をモチーフとした衣装ですら、エキゾチックの枠には収まらない新鮮な美しさを感じる。そのためか、彼女のデザインは日本的な伝統文化・芸能と結びつくことで、ある種の普遍性を志向するようにも見えてくる。コシノジュンコにとっての「コントラスト=対極」はたんなる対立ではなく、共生的で包容力のあるデザイン哲学なのかもしれない。
ところで、あべのハルカス美術館でファッションを主軸にした展覧会は今回が初めてのように思う。アリス展で多少ファッションの展示もあったけれど、陳列という感じだった。本展は昨今のファッション展の例に漏れず、空間全体を生かしながら衣装の世界観を具現化していた。ビル内の美術館ゆえ壁の距離が近く、昨年話題になったファッション展のような壮大な感じはないが、一部ビルの眺望を生かした開放感のある展示も組まれていて、独特な造形の衣装がより躍動的に輝いていた。