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山羊と風景と植物の画家
辻永はつじ・ひさしと読みます。1884年(明治17年)に広島に生まれ1974年に亡くなっている。育ちは水戸とのことで、茨城県立近代美術館で開催することになったようです。戦前は帝展、戦後は日展で活躍して、日展の初代理事という方です。あまり興味がわかない経歴ですが、「ふたつの顔」という言葉に惹かれて、水戸芸にいったあとに訪問してみました。
辻永は山羊と風景と植物を描いた画家でした。面白かったのは、画家として初期の作品は山羊を描いていたこと。それも山羊の飼育しながら、山羊を描いたという、さながら若冲が鶏を庭に放し飼いにしていたような感じかな。その後、風景画を中心に描くようになっていくのですが、この辺の絵はそんなに目を引かない。むしろ、室内を描いた作品が色鮮やかで記憶に残ってしまった。そして植物画。辻永は植物学者になるか、画家になるかを悩んで、画家になったそうで、植物画は植物の特徴を描いたモノで、画家の作品ではなく植物学者としての作品のようです。数も多く、実際にその絵を基に植物図鑑を作っていて、関係者に牧野富太郎の名前もありました。かなり本格的なものだったらしい。
作品はそこそこ楽しめたし、辻永が東京芸大の前進となる東京美術学校の出身で熊谷守一とか和田三造と共同生活をしていたとういうあたりの展示も写真があって興味深いモノでした。一方で、展覧会の図録がないのに写真撮影は許可しない、というのが、あまりピンとこないところ。