5.0
本歌取りだけでも面白いのだけど、本歌の幅が広いと楽しくなる
最初に杉本博司の作品、例えば「ジオラマ」シリーズを見たとき、かなりコンセプチャルな写真家だと思っていた。
それが、2008年の「歴史の歴史」展から自身が収集した古美術品と自身の作品をあわせたインスタレーションを実施し、写真家という枠では括れなくなった。気がつけば建築、人形浄瑠璃、庭園設計、墨書、表装となんだかいろんな分野を手がけていて、どうにも手に負えないところで、今回の「本歌取り」となった。
杉本作品のほとんどが、まあ「劇場」とか「建築」は多少違うかもしれないが、「本歌取り」という概念で整理できる、ということになった。結構、納得できるのでした。というわけで、本歌と本歌取りが明示されて、ものによっては両方が並ぶ展示になっている。そして過去の企画展に出展された作品も数多く展示されていて、それが写真撮影がOKということで、とてもありがたい展示でした。
会場となった姫路市立美術館もかなり不思議な空間で、会場自体は10×60メートルの巨大な回廊です。この回廊の真ん中を壁で区切った構成になっている。左側に入って、突き当たりまで行き、折り返して右側に抜けて戻ってくる。結構、巨大な屏風もあって、わりと密な感じです。
杉本展を見終わって、もう一つ、野外彫刻が並ぶ美術館の前庭で中谷芙二子による《霧の彫刻 #47769 白鷺が飛ぶ》をじっくり拝見しました。わりと風が強かったので完全に霧に包まれるとまではいかなかったけど、なかなか面白い体験でした。