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コロナ禍に開催された正倉院展 安寧を願う思いは通ず
たまたま昨年の正倉院展の際に「奈良博プレミアムカード会員」に入会したため、プレミアムカード会員向け「特別鑑賞会」(解説会付)に参加しました。
感染予防のため1時間当たり約260人の受け入れだそうで、鑑賞者同士で譲り合いながら、単眼鏡でゆっくりじっくり拝見できました。
正倉院宝物は現在約9000件、そのうちから宝物の全体像が分かるように出陳されています。今年は59件の出陳で、なかでも光明皇后が献納された薬物と奈良時代の武器・武具の展示に今年は特徴があるようです。
光明皇后献納の「薬物」は昨秋には出陳が決まっていたそうですが、なんとタイムリー!正倉院はシルクロードの終着点とも言われ、大陸から多くの文物がもたらされ、この時代は日本から大陸へ渡るもの、日本へ渡来する人々と人の交流もさかんでした。それに伴って疫病ももたらされ、天然痘が大流行したそうです。出陳されていた正倉院文書『周防国正税帳』は、税の決算報告ですが、疫病の流行で税の徴収が難しいなどが記されていました。
思わず立ちつくし「きれい」と声が漏れたフェルトの敷物の「花氈 」、囲碁の盤「桑木木画碁局」単眼鏡でも追えない細かさ、しなやかな筆つかい「墨絵弾弓」、上下がある鏡「平螺鈿背円鏡」などなど、細やかな細工、超絶の技、美しい色彩、豊かな材料・・・仏への荘厳の品の作成には不思議な力が後押しをしたのでしょうか。
一度公開された宝物は原則として10年以上は出陳されないそうで、私にはそれぞれの宝物が「一期一会」と思い感謝しながら拝見しました。
正倉院宝物は、発掘品でなく、正倉院という優れた構造の倉で人々によって大切に1260年もの長い年月を守られてきた品々で、それを目にする感動と感謝。
コロナ禍の今年も開催してくださったことにも感謝。