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私たちと同じ時代を生きる工芸家たちの個性豊かな優品
曰く「変化に富む地形と四季折々の気候、自然との共生による密接な精神的感性と固有の生命感が芽生え、我々自身の自然観が、各地に特徴的な工芸を育んできた」と。それでいながら私たちは、自身の歴史や文化に対し、今一つ評価を上げられない不思議な国民性があります。他者からの高評価を聞いて初めて、私たちは自分たちの身近な技や美に、目を向けるかの様です。絵画はまだしも、ことに工芸は…です。今、私たちと同じ時代を生きる工芸家たちの、個性豊かな優品が82点、トーハク表慶館に集まっています。
東京国立近代美術館工芸館が移転して東京から消えてしまい、工芸ファンには寂しい限りです。けれど秋は毎年の三越「日本伝統工芸展」や日展でも工芸部門があり、そして今年は少し前、パナソニック汐留で「和巧絶佳展-令和時代の超工芸」は素晴らしかったですし、智美術館ではコレクション陶芸の一流どころオンパレードも見ごたえありました。そしてトーハクでは、この展覧会です。日頃外観しか拝めない片山東熊の表慶館内部が見られ、なおかつ建築家伊東豊雄氏の会場構成とは、ちょっぴり嬉しかったです。ゆるいアールの展示台は床から立ち上がるようなで、「自然」と言いつつ、天板に敢えて用いた人工素材のアクリル板はとてもハイセンスな印象でもあり、黒の天板はまるで磨き込まれた黒漆の様で、作品を引き立たせています。自然な感じの照明もしかり。伝統工芸展や日展の無機質な白布の展示台に全体照明と比べ、また智美術館の落ち着いた感じの展示台にスポットライト、とも違い、とても新鮮で引き付けられました。ガラスケースの中になる近代美術館工芸館やパナソニック汐留とは、多方向から鑑賞も出来、迫力もけた違いに思います。
素材や技法、あるいは地域や年代でもなく、色を中心とした四つのニュアンスで構成されていて、異なる分野の作品が並ぶのも少しユニークでした。
あと一つ言えば休憩ベンチはそれなりに考えられた結果とは思いますが、ちょっとどうかと…。
何れにせよ当サイトやトーハクサイトで見所はチェックできます。工芸に詳しくなくても気軽に味わえる内容です。空いていてゆっくりマイペースで鑑賞できます。日時指定は多分、当日受付でも大丈夫だと思います。「桃山」展もいいですが、こちらもお勧めの展覧会です。会期末が近いです。ぜひご覧頂きたいです。ついで… Read More