4.0
常に挑戦し変化し続け、一人の作家とは思えないバリエーション。大満足です。
非常に早くから認められ注目される中、49才という若さで逝った加守田章二氏の、作陶期間はわずか20年ほどでした。その短い期間は濃く、生き急ぐが如くにまさに疾走し、多くの作品を残し、多くのチャレンジを続け、作風は目まぐるしいほどに変化していきました。
螺旋階段で地の底まで引き込まれていくような、そしてその先の暗く小さ目ながら、いつも何か緊張感を感じてしまう、智美術館展示室の独特な雰囲気に、今回の加守田章二回顧展はとても合っていました。「野蛮と洗練」ですか…。たしかに。私はやはり氏の代名詞ともいうべき 「曲線彫文」 の作品群が一番好きです。古代人の呪術的なアイテムのようでもあり、はたまた、自然が生んだ造形物のようでもあり。素朴と繊細とのせめぎあいの中で最も美しいところに折り合った、ほんの少しでもずれれば壊れてしまいそうな緊張が、そこに有るように思われます。一見シンプルながら、見れば見るほど惹き込まれる不思議な魅力に満ちています。所々で紹介されていた氏のコメントも、なかなか魅力的でした。展示作品は時系列に沿って紹介されていましたが、最後の特別展示室は嬉しいことに「曲線彫文」 のコーナーとなっていました。圧巻でした。「曲線彫文」作品 の放つ緊張の圧で、自分までムンクの叫びの様になった気分でした。でも、本当に素晴らしかったです。