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展覧会という絵画
フランスの象徴主義画家、ギュスターヴ・モロー。
時代としては印象派とおなじ19世紀末に活躍した画家です。
聖書や神話を題材とし、写実性では無く、人間の内面性や夢、神秘性という物を絵画によって象徴的に表現しようとする試み。
モローは、象徴主義の先駆者であり、象徴主義を代表する画家。
特に「宿命の女(ファム・ファタル)」をテーマに描いていることで有名です。
画風は大胆にして繊細。
まずは、荒々しいタッチで作品を描きます。この荒々しさはフォービズムに近い。
と思ったら、それもそのはずで、後に出てくるフォービズの画家達はモローの指導を受けているとか。
しかし、その上から緻密なラインで装飾を施していきます。
まるで、フォービズの絵を下絵に、レイヤーを分けてペンを入れたような印象。
その最たる物が、彼の代表作で本美術館の目玉「出現」
この絵を描くまでにはかなりの下準備があったようです。
いくつもの習作。膨大な資料。そして、経験値。
元々勤勉で真面目な性格だったらしく、イタリアのルネッサンス絵画はもとより、インドの緻密画や日本の仏画までも、書物を求めたり、図書館に通って研究していたらしい。
今回の展示物にもそういった習作やデッサンが多くありましたが、パリの彼の美術館には更に膨大な下絵やデッサンが残っているようです。
まるで、東洋にある古い寺院の壁画として描かれているようなサロメもありました。
もちろん、ファム・ファタルはサロメだけで無く、スフィンクス、レダ、デリラ・・などなど。
悪女、聖女のオンパレードです。
展示物の最初は、私生活に関わる作品。
かれの最愛の女性であった「母親」や、若くして無くなった「妹」
さらには一生独身であったけれど、30年近く行動を共にした恋人アレクサンドリーヌの素描など。
モローと女性というテーマに一貫している展示内容がニクい。
そしてラストは一角獣と戯れる少女の絵画で締めくくる。
処女にしかなつかないといわれる純潔の象徴である一角獣。
当然、彼らと戯れるのは、穢れをしらない少女たち。
彼女たちと、「ファム・ファタル」の違いは何なのであろうか。
この対極をなす存在と間に、現実に彼が愛した三人の女性が位置している。
彼にとって、男にとって「女性… Read More