3.0
「仏像の形態」に着目した異色の仏像展。
仏像の「顔」「装飾」「動きとポーズ」に着目し、仏師の感性と技術に迫る展覧会。この秋東京で見られる3つの仏像展のひとつ。なかなか楽しく見させていただきました。
三井記念美術館は入り口と最初の展示室こそ重厚な雰囲気ですが、タワービル内のワンフロア―という限られたスペースの美術館。さりながら、三井家が収集した日本と東洋の美術品の優れたものを、なかなか面白い切り口で見せてくれている。スペースのせいか比較的小ぶりの展示品が多く、明治の超絶技巧や象彦・柴田是真など工芸作品、能関係など、強く印象に残っている回も多くあります。今回の「仏像の姿」では、三年前の「蔵王権現」の回が思い出され、トーハクの様に溜息や感嘆の仏像との出会いは期待せず、何か面白いものに出会るかなと、思って出かけました。
神奈川称名寺の仏像数点、地元だったのに知らなかった、のでちょっと驚かされました。奈良博やトーハクでお馴染の素晴らしい仏像にもお会い出来ました(特に「伽藍神立像」や十二神将にお会いできたのは嬉しかった)けれど、小ぶりの像だけに個人蔵の出展も多く、なかなか見られないものが見られたと思っています。光背にガラスが使われた鎌倉期「弥勒菩薩立像」などはとても素敵でした。
最後の部屋は藝大文化財保存学とのコラボで、仏像の,様々な技術を駆使した調査研究から、修復やレプリカ作成、というものが紹介され、日本古来より培われてきた仏師の技術や創意工夫が、未来にどのように継承されていくかを考えさせられます。私も大学時代博物館学芸員資格を取得しました。講義や実習でいろいろ学んだりやったりしたことが思い出されましたが、あれからうん十年、当たり前ながら技術が進んでいることを実感しました。若者たちが古の文化や技術をしっかり訪ねて未来に伝えて行ってくれることを、心から楽しみに思います。何時か、古色よごしを入れた現状再現のレプリカでもいいです、展示品に、化学で知ることの出来た往時の色や装飾の再現を、時間を限ってプロジェクションマッピングで見せてくれたりしたら、嬉しいなと思います。実際極彩色の仏像より退色した今の木肌の仏像の方がいいと思う私ですが、落成当時の人々が見たであろう像の姿も、見てみたいと思いますから。ついでに背景に置かれている堂宇の映像もつくともっと嬉しいですね。