4.0
頭でっかちの現代芸術にゆさぶりをかける
また超絶技巧かということなかれ。
確かにここ何年か、超絶技巧をうたった展覧会が数多く企画されています。
同じように写実絵画も注目を浴びています。おそらくこの両者には関連があるのでしょう。
共通するのは、徹底して本物らしいこと。
「驚異の超絶技巧 明治工芸から現代アートへ」にも、本物そっくりのミニチュア作品が数多く展示され、どれもこれもよくここまで細部にわたって再現したものだと思います。ここにはわからないものはありません。
象牙彫りの胡瓜はキュウリであること明らかです。自在細工の蛇はあくまでヘビです。頭としっぽと骨だけになったサンマは、木彫のサンマです。
同様に写実絵画も見てわかります。絵に描かれているものは見たままによくわかります。また、そこに使われている技術が並々ならぬこともわかります。
おそらくは、見たままにわからない芸術が幅を利かせた揺り戻しが起きているのでしょう。
表現は常に内容と形式を伴います。テーマと技術といってもいい。
テーマと技術が足並みの揃わない芸術の揺り戻しが、超絶技巧であり写実絵画のちょっとしたブームの理由ではないか。
技術は侮れません。いくら高尚なテーマであってもそれを表現する技術次第で生きも死にもする。もちろん技術だけでは芸術になりません。
この展覧会は明治の工芸と現代アートを並列させています。今の時代に、技術技巧を追求する芸術がしっかりと引き継がれているのは、素晴らしい。
テーマ性や表現形式にこだわりすぎて次の展開を見失いそうになる芸術に、超絶技巧や写実絵画はゆさぶりをかけてくると思われるからです。