浮世絵×カブキ 江戸の役者絵展
山口県立萩美術館・浦上記念館|山口県
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浦上座 夏の大興行
猛暑の8月、うちから車で70㎞、小1時間かけて萩美へとやってきた。今年はこれで4回目かな。
例年なら山口県美と萩美共通のメンバーズカード使うのだが、今年は両館とも見たい企画展が少なかったので、メンバーズ制度開始以来ずっと入会してきたのを初めてやめた。
そんな中、萩美の2023年度企画展で唯一興味あったのが、この「浮世絵×カブキ」展だ。その期待に見事に応えてくれるいい展覧会だった。
当館の浦上コレクション主体に、全国の美術館、博物館からも名品が続々と集結、やっぱり浦上敏朗さんの影響力はありがたいなあと心から思った。
もちろん、萩美学芸員さんの企画力にも感謝だ。
今回の企画は、浮世絵ではおなじみの芝居絵や役者絵にフォーカスを絞ってのもの。
浮世絵に歌舞伎が登場して以来、数多の絵師が取り上げてきたのを元禄期から明治期まで時流に沿って紹介してくれている。
歌舞伎はTVで断片的にしか見たことなく知識もない私でも、絵を見るだけで十分に楽しめた。
展示は、元禄末期の鳥居清信の細版丹絵から始まる。千葉市美からやってきた作品だ。
公立美術館の浮世絵コレクションのエースでもある同館へのリスペクト忘れてないのが嬉しいね。
ついでに、今回出展協力いただいたとこを紹介しておくと、千葉市美、東博、太田美、神戸市博、神奈川県歴博、早大図書館、早大演劇博、慶大、江戸東京博、国立劇場、たばこと塩博、阪急池田文庫。(敬称略)
どうです。アカデミックでしょ(笑)
国立劇場なんて行ったことないし、そこにある美術品は平櫛田中の鏡獅子しか知らないが、浮世絵もあるんだねえ。しかもそれが素晴らしい。
勝川春英《四代目岩井半四郎の七変化》なんて、先日太田美で見たポール・ジャクレーのプロトタイプではないか。
そしていよいよ「大首絵」の登場だ。どうしても写楽から見てしまう(笑)
出展は5品。《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》は何度見てもいい。これも千葉市美さんから。
写楽作品でナイスな企画は、萩美と東博のコラボ展示。「暫」の名場面が二枚に分かれてるのを並べて展示。
解説読んで初めてわかる合体の理由。ためになるねー。
大首絵では国貞の《八百屋お七》が最高。あのギョロ目美人は、役者絵界のスーパースターだ。
激レア作者としては、歌舞伎堂艶鏡。全く初めて聞く人だ。写楽のデフォルメ度を弱くした感じのかっこいいい役者絵だ。
お七は神奈川県歴博さんから、艶鏡は太田美さんからの来萩。ありがとうございました。
珍しかったのは「死絵」。国長と国芳の作品が1枚ずつ出展。
亡くなった役者への追悼の意で描かれるんだそう。全体に薄墨で紗をかけたような暗い画面で、いかにもな絵。
当展、会期中にお盆があるのでこれもいい企画だ。
後半は、幕末~明治期の腕達者の競演。国芳の冗談絵から、芳年、芳幾の極彩色まで浮世絵の200年間を1時間余りの鑑賞時間で終えるのが名残惜しい。
各作品のタイトルにはほとんど役者名が出てるので、今も続く大名跡から消えてしまったものまで、歌舞伎に疎くても何となくその歴史はわかったような気になる。
いやほんと、すごい伝統芸能であり日本文化だ。
当展、会期は8月27日まで。ほとんど通期展示ですが8月12日から一部展示入れ替えあり。
常設展もこの企画展に合わせた時期が超オススメ。
陶芸館では「茶陶の近現代」として、名工の作品がズラリ。作者名はHPで。驚きますよ。
そして浮世絵常設展示が川瀬巴水。全32点は選りすぐりの名品揃い。《増上寺の雪》も《馬込の月》もちゃんとありますよ。
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