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チームラボ 無限の連続の中の存在

チームラボ 無限の連続の中の存在

姫路市立美術館|兵庫県

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「チームラボ」超主観空間に触れる

 姫路市立美術館では4年ぶり2回目の「チームラボ」展の開催。今回は前期(7月~10月)、後期(10月~翌年1月)で展示替えがあり、それぞれ5点、通期で10点の出展が予定されている。

 前回「世界は暗闇からはじまるが、それでもやさしくうつくしい」展(2019年4月20日~6月16日)と同様、暗い展示室内の壁面に作品が映し出される。足元の床はほのかな反射と随所に配置されたミラー壁面が視覚的な奥行きをつくり出し、黒いマットな天井は暗闇に溶け込みながら今回の「無限の連続のなかの存在」へと鑑賞者を誘う。
 
 チームラボ代表、猪子 寿之氏は「デジタルを画面の中だけでなく、空間そのものを使って体感できるデジタルとリアルがあいまに共存できる空間デザイン」「超主観空間」について語り、固定された狭いレンズの視野では表現できない画角のない空間の広がり、連続性、鑑賞者の身体性との境界面、ディスプレイ画面のような隔たりを感じさせない一体感、生々しさ、没入感を説く。

 入口最初の展示は立体物が壁面にかけられた掛け軸のような和と静の印象だ。動かない金箔の背景に3Dの藤の木がゆっくりと回転し、季節の移ろいとともに見え方が変化する。椅子に座って鑑賞しているうちに暗闇に目が慣れ、心が鎮まってくるようだ。次第に「チームラボ」の世界観に導かれていく。
 
 先に進むと横に広がる大きな壁面には一面和紙が貼られ、壁面に咲く花に鑑賞者が触れると萎れて、新たな花々が立ち上がり増殖し四季を彩る。別の壁面は鑑賞者の影にリアルに反応して同じ色相の無数の光の粒子が同期し自律的な細胞、生命体のように集まり、抽象画のような形状をカラフルなグラデーションで描く。墨蹟を白黒反転したように黒のバックに白く力強い線が流れるように走る作品も見える。

 動を感じさせる作品はいずれもコンピュータプログラムがその場の鑑賞者の身体と同期するように入力を瞬時に演算し、再び同じ絵が投影されることはないそうだ。

 細長い展示室の行き止まりの作品はグレートーンの人型を包むように、絶え間なく流れるような光を発している。北極と南極を行きかう地球の磁場を可視化したようなトーラス状の無限の運動エネルギー、生命エネルギーのように思えてくる。出入口は一ヵ所なため、向き返ると長い展示室の反対側に設置されたミラー壁面に反射して、背後の人型作品と自分の影が一点透視法の消失点のように小さく見えた。

 補足ながら、書写山圓教寺の食堂(じきどう)で12月まで展示されているチームラボ「認知上の存在」作品2点も鑑賞するには、美術館から数キロ離れる山中に移動するためバスやロープウェイと急な山道を徒歩で登らなくてはならない。思いのほか時間、体力も要するため、暑さが和らぐ紅葉の時期がいいかもしれない。

 時間を忘れて暗い展示室に目が慣れていたせいか、美術館を出た屋外庭園で1時間に2度定期的に噴霧される中谷 芙二子氏の霧の作品が夏の光の中で白く眩しく煙る。子どもたちが盛大なミストの中で歓声を上げながら走り回り、風の動きによって幻想的な美術館横の姫路城のシルエットが強弱を伴って見え隠れする。

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