
歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界
泉屋博古館|京都府
開催期間: ~
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繊細な描写と点がな色彩に満ち溢れた企画展
祇園祭の賑わいを感じる7月、梅雨明け切らぬ天候の中、初訪問しました。
京都市の東端にある泉屋博古館は、雨上がりの澄んだ空気に一層緑が鮮やかで、木々の合間を通り抜けた涼やかな風が訪れた私たちを出迎えてくれました。
【歌と物語の絵】の展示室は、入り口に立つと室内が見渡せてしまうほどのサイズの一室でした。
正直なところ、さまざまな企画展を見慣れた私には「たったこれだけ?」という印象でした。
第一章:うたうたう絵
三十六歌仙の絵や和歌の短冊が並び、百人一首で馴染みある和歌もあり、歌人のうたう思いや情況などを感じさせる絵が施され、和歌を詳しく知らない私でも、肩の力を抜いて鑑賞することができました。
なかでも心打たれたのは土佐光貞の「秋草鶉図屏風」です。
六曲一双のこの屏風、右隻には夫婦円満の象徴である鶉、左隻には畑を見渡す親子が描かれているのですが、遠くに描かれている山々の緑青を見た時に
「日常の何気ない様子や人を恋しく思う気持ちを繊細に感じ取り、歌として、絵として表現する日本人のこの感覚を、私を構成するDNAに持っているんだ」という不思議な気持ちが込み上げてきました。
これまでもたくさんの日本画、洋画を見てきましたがこういう感覚は初めてのことだったので、作者が作品に込めた思いに、なにかしら自分の感性が引っかかったのかと印象深い出会いとなりました。
第二章:ものかたる絵
源氏物語、竹取物語、伊勢物語など、馴染みある物語の図画は、眺めていると昔読んだ物語が蘇ってくるようでした。
その中で面白く鑑賞したのは【是害房絵巻】で重要文化財指定を受けたそうです。
個人的に大好きな鳥獣人物戯画を彷彿とさせる作品でそれこそマンガのように登場人物(登場天狗?)のそばにセリフが書き込まれていて、読み解くのに夢中になりました。
もちろん、解説パネルもついていますが、わりとざっくりだったので、細かく解説があると嬉しかったなーという印象はありました。
見終わって、入場時には「これだけ?」と思った気持ちがガラリと変わり「たっぷり見れて大満足の企画展だった!」という感想となりました。
雅な貴族社会の模様から日本の情景、そして面白おかしい天狗たちの物語など、実に見応えあり素晴らしい企画展でした。
残り期間も少ないですが、ぜひご覧いただきたいと思います。
最後になりましたが鑑賞チケットをお送りいただき、この度の機会をご提供くださいました事務局様に感謝申し上げます。