
虫めづる日本の人々
サントリー美術館|東京都
開催期間: ~
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虫たちの世界を満喫
薄暗い会場に虫の音が響き、まるで月明かりのもと散歩している気持ちになる。ゆっくり歩きながら草木に紛れた虫を探すのも良いし、物語にそっと寄り添う虫の音に思いを馳せるのも一興だ。虫をあしらった工芸品も見逃せない。夜月に照らされる虫を表現するのに漆ほど適した素材はないなと思ったりする。
そして特に印象に残ったのは、やはり若冲。
『菜蟲譜』は別格の上手さというのもあるが、人物の添え物でもなく、図鑑でもなく、虫の世界を生き生きと描いているのが好きだ。カブトムシやトカゲ、セミ、バッタ、ムカデなどなど、特に虫好きではない私には名前が分からない昆虫もたくさんいるが、ここでは虫たちが主人公。子どもたちに虫たちのセリフを吹き出しで書かせたら結構面白い話が出来上がるのではないだろうか。『菜蟲譜』は11mの巻物で前半は野菜や果物とのことだが、虫エリアだけピックアップするというのも乙である。
そんな虫の世界を楽しみながら歩いて行った最後に出会った作品に度肝を抜かれた。
バッタやトンボの置物ではあるが実に緻密。足のケバケバしたところも再現されていて、その軽やかさから「木彫?」と思いキャプションを見ると「自在」と書かれている。自在ということは「金属? 動くのかこれは?」と3度見じゃ足りないぐらいキャプションと作品を行ったり来たり。
現代作家の満田晴穂さんの作品だそうで、凄いのは古いものばかりじゃないなと嬉しく思いながら会場を後にした。