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加賀宝生のすべて ー能面と能装束ー

加賀宝生のすべて ー能面と能装束ー

石川県立美術館|石川県

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本当に「加賀宝生のすべて」なのだろうか?

 タイトルの「加賀宝生のすべて」という大きさに、全部見終えるのに何時間掛かるのか…と懸念していたが、ガランとた広い展示室にやや拍子抜けな気ちで観覧。
 展示は翁面(15世宝生弥五郎友干(ともゆき)師旧蔵)から始まる。面は展示ケースの中の「T字型のアクリル板」に紐でくくりつけただけの簡単なものだが、自分の姿がケースに映り、まるで面を付けている自分を見ているようにも見える(偶然なのか意図的なのかはさておき)。それに加え、面の裏面もしっかりと観られるため、面の展示方法としてこれ以上の演出はないと思った。《能面 節木増》宝生会蔵をはじめ、ここまでじっくりと見られる機会はまたとなさそうだ。
・9《能面 節木増》江戸時代18c 公益社団法人宝生会:木の節から出た脂が表面に出て鼻根のあたりにしみができたがかえって艶となり女性の気品あふれる美しさを現した。大聖寺藩前田家より宝生会へ。

 今回の展示は、動乱の明治期に散逸した加賀藩前田家所蔵の能装束のお里帰りともいうべき内容で、各作品の持つストーリーがとても魅力的であった。例えば、装束を収納している畳紙に制作年代や用いる演目などが記されていると。
・49 単法被《楽器模様》1812 野村美術館蔵:琵琶、鳥兜、羯鼓、火焔太鼓、笙、篳篥、龍笛、箏
・54 縫箔《唐花に蝶模様》1815 公益財団法人前田育徳:朝長之後御気附
・67 長絹《牡丹折枝に蝶模様》1860 公益社団法人前田育徳:越中富山藩の第10代藩主利保(1800-59)「富山様より御譲の御分」。富山騒動を鎮め能装束を譲り受ける=富山藩も手に入れたことにと。謡本刊行(1844)。

 なかでも「第4章 狩野芳崖がみた能装束」は見応えがあった。
当時、狩野芳崖は東京美術学校の教材とするために前田家の所蔵能装束50領を模写したという。
・68《加州家蔵能装束模様》5巻 1887 東京藝術大学蔵
・31 厚板《四ツ目瓜唐花飛紋模様》江戸時代19c 石川県立美術館
・69 唐織《藤棚模様》江戸時代19c 野村美術館:第4巻第2図
・70 唐織《石畳に桐鳳凰笹龍胆模様》江戸時代19c 畠山記念館:第4巻第1図
・71 長絹《芙蓉に紅葉模様》1860 野村美術館:第3巻第8図
・72 長絹《唐花亀甲に蝶模様》1808 公益社団法人宝生会:第3巻第7図
・74 舞衣《棒霞に鉄線模様》1808 国立能楽堂:第1巻第5図
・75 舞衣《花丸牡丹唐草模様》1830 野村美術館:第5巻第7図
・76 舞衣《福包に二つ戻り笛の袋ふり太鼓模様》1858 公益社団法人前田育徳:第5巻第6図

 展示概要にある、「多彩で華やかな能装束の展示をとおして、「加賀宝生」の栄華を再現する」「地方において独自の展開を遂げた加賀藩の能楽史を再考する」という内容は展覧会内で全く達成できていない印象も。
解りやすい文言で伝えることこそ、能に関心を持ち理解を深めること、能楽堂へ足を運ぶきっかけになるのではないかと感じた。

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