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生誕150年 山元春挙

生誕150年 山元春挙

滋賀県立美術館|滋賀県

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和洋中折衷

聞いたことのない画家の展覧会に惹かれてしまう。
山元春挙もそうなのだが、今はネットでだいたいの作品と画風がわかるので実に便利。この絵ならたぶん間違いなかろうとの思いで、滋賀県立美術館まで出かけて行った。

アクセスはJR琵琶湖線瀬田駅からバスで15分ぐらい、県立図書館・美術館前で下車。美しい庭園内にある美術館だ。
春挙展のチケット1200円でコレクション展示も見れる。これってすごく大事。別会計なとこ多いからね。この恩恵がサプライズを呼んだ。最後に書きます。

企画展会場は二室(フロアマップでは一室だが、つながった二分割の部屋)あって結構広い。土曜日の午前で客も少なく優雅な気分で鑑賞できた。
山元春挙は地元大津市の生まれで帝室技芸員まで務めた日本画の巨匠である。彩色した山水画や風景画が和テイストでありながら、中華風や西洋風の味付けもあって美味しく鑑賞できる。いわば和洋中折衷の絵とでも言おうか。
ただ、和と洋と中のバランスは等分かというとそうではない。描かれているのが桃源郷や蓬莱山なら、中華味。足立美術館蔵の大作「瑞祥」が典型だろう。
洋風テイストなら、「春の海」や「山上楽園」。絵具の緑や青が実に美しい。

しかし春挙の本質はやはり日本画だ。
円山四条派の系譜に属する画家なので、応挙トリビュート的な作品でそれがわかる。
東近から来てる六曲二双の大屏風「雪松図」は、三井記念美術館の応挙作の国宝「雪松図屏風」を意識したものに違いなく、そこには中も洋もない。圧倒的な和の美しさ全開だ。
弟子たちに「どうだ。円山派を名乗るならこれぐらいできて当然だ。」と言わんばかりの気迫あふれる作品だ。

ちょっと面白く見たのが、「塩原の奥」。
横長の四巻、春夏秋冬のうち秋と冬が展示。セピア色モノトーンで渓流を描いたものだが秋の巻では部分的に紅葉を朱に塗っている。
これって、黒澤明の「天国と地獄」ではないか。後にはスピルバーグも「シンドラーのリスト」でやった手法。黒澤がパートカラーを思いついた半世紀以上前に春挙が日本画でやってたことになる。

消化不良だったのが「義士の面影」という作品。
爛漫の桜、川面、カワセミを描いた美しい絵で、キャプションにはカワセミが大石内蔵助、水面下に潜む魚を吉良上野介に見立てたと書いてあるが、それがなければなんでこの絵が赤穂浪士なのかはわからない。
さらに春挙には「義士隠栖」なる絵もあって、この絵と対照的ウンヌンとあったが、そっちの絵は当展には来ていないので解読できず。あとで図録買って調べたら、「義士陰栖」は雪の山科の大石住居を描いたものだった。
当展、この後は笠岡と富山に巡回するので、そこでは見れるはずだ。ただ、二作品同時に並べないとせっかくの解説が意味不明になってしまう。忠臣蔵好きは皆さんそう思うのでは。

山元春挙展、遠路やってきた甲斐のある素晴らしい展覧会だった。
数も質も大満足できたが、贅沢を言わせてもらえば前後期に分けた展示作品をもっと通期にできなかったか。
他所からの作品は貸出期間の制約もあろうが、せめて当館所有分は全作通期展示ぐらいの度量がみたかった。当然、巡回先にも一挙貸し出すぐらいの。

最後にちょっといい話。
この企画展見た後、当館のコレクション展示室に行ったら、なんと、安田靫彦の「飛鳥の春の額田王」があるではないか!
これには驚いた。ここのコレクションだったのかあ。
ものすごく得した気分で館を後にした。

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