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新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション

新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション

京都国立近代美術館|京都府

開催期間:

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所蔵品だけで辿れる岸田劉生の画業

「京都国立近代美術館岸田劉生作品42点を一括収蔵」の記者発表については、昨春ブログでお知らせしました。
京都国立近代美術館の岸田劉生作品は全部で50点となり、新収蔵品のお披露目を兼ねて所蔵する全ての劉生作品を展示する展覧会です。
コロナ感染者の激増期と重なり残念です。
(その分、展示スペースも十分配慮されじっくりゆっくり拝見できたのはラッキーでした)
かくいう私も、展覧会の記者内覧会は大阪中之島美術館開館の記者内覧会と同じ日で伺えず、
感染者がドンドン増えて会期末近くにやっと伺ってきました。

岸田劉生は麗子像やリアルな静物画や「道路と土手と塀(切通之写生)」(東京国立近代美術館蔵)の印象がありすぎて、
私には見えていない部分が多かったことを再認識いたしました。

劉生の画業は居住地で追うことができ、展覧会もこれに倣って進んでいきます。
劉生の38年の生涯を追って。

結核と診断されて、後にはそれが誤診だったとありましたが、
病気療養もあって鵠沼へ移ります。
この時代対象を室内に向けて、麗子像や静物画を多く描いており、劉生の代表作は鵠沼時代に描かれていました。
展示の《壺》や《壜と林檎と茶碗》はやはり惹かれて、じっと拝見しました。
妻の影響で興味を持った歌舞伎の芝居絵や版画作品、展覧会ポスターなど、これまであまり印象がなかったので、多彩な作品展開を興味深く観ました。

そろそろ転居したいと思っていた矢先に関東大震災が起こり、名古屋を経由して京都、
それもこの京近美のすぐ近く、無鄰菴のすぐそばに移り住みます。
敬虔なプロテスタントでいっときは牧師をも目指した劉生ですが、
京都に来てからは初期肉筆浮世絵や中国の宋元花鳥図の研究と称しての古画の収集やお茶屋さん遊びで散財したそうです。
この時代に描かれた日本画や南画がなんだかとても面白い。
京都での劉生の足跡を地図でパネル展示されていました。
歌舞伎も好きだったし、古美術商の通りも近くにあるしで、祇園界隈はよく通っていたでしょうにと思ったりしながら。

3年の京都の暮らしからまた鎌倉へ戻り、劉生自身も心機一転の気持ちもあったかもと勝手に思いながら
中国旅行に出た帰りに、山口の徳山で急逝してしまいます。

38歳あまりにも短い、もしもはないけれど、渡仏できていたら、日本画や南画をも描いた先に劉生はどんな作品を描いていたでしょう。

岸田劉生、敵も多いが、サポートしてくれる人も多い。ヒトとして、画家としての魅力があったからに違いありません。

劉生作品を収集したコレクターにも注目した展覧会でもありました。
京近美の芝川コレクション、この「芝川照吉」について「『草土社』を丸ごと面倒を見た。」という解説がひどく心に残りました。

巡回はありません。岸田劉生の画業全般、多彩な制作を概観できる展覧会です。会期末ですがお薦めしたい

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