感覚の領域 今、「経験する」ということ
国立国際美術館|大阪府
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自分との対話
7名の現代アーティストによる企画展。絵画、版画、立体作品、映像作品等、バラエティーに富み、それぞれの作者の独自の視点により表現された作品が、我々に「経験」することとは何かを考えさせる。
特に印象に残った2つの作品を紹介したい。1つ目は中原浩大氏の「Text Book」。机の上に大きな本が置かれており、1ページずつシルクスクリーンによって色とりどりの円が印刷されている。それを1枚1枚めくっていくのだが、鑑賞者のその作業をもって、1つの芸術が完成するということだろうか。また、その時湧き上がる感情も含めて、各々の芸術を味わえということなのか。
自分の中の無意識を掘り起こされるような感慨深い作品だった。
2つ目は名和晃平氏の「Dot Array-Black」シリーズ。真っ白い広いスペースに黒い版画が横一列に整然と並んでいる。円と線が描かれており、段々と変化していく作品群である。1点ずつ鑑賞している時は気づかなかったが、部屋の真ん中に立って、全作品を眺めてみると、まるで作品達が内側に向かって、こちらを凝視しているかのような感覚に襲われる。あるいは真っ白い部屋に並ぶ黒い作品は外界に向かって開く出口なのか。
想像力をかきたてられる不思議な体験だった。
コロナ禍になり、日常は大きく変わり、人類は多くの犠牲や困難を強いられた。しかし、一方で我々が正しいと思い込んでいた常識や価値観に懐疑的な目を向け、問いただすという機会を与えられたように思う。
「芸術はかくあるべき」という一面的なまなざし、固定概念の下、本展の作品の前に立っても作者の伝えたいコンセプトやメッセージは受け取れないだろう。
自分の内面を見つめ直し、自身の感性や精神の解放とは何かを問われているかのような美術展だった。
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- BY springwell21