庵野秀明展
山口県立美術館|山口県
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庵野秀明賛
庵野作品で私が見たのはシンゴジラとシンウルトラマンのみ。
だから当展をレビューするなんて、誠におこがましいのだが、氏と同世代の一人の感想として、そして氏の故郷の住人として駄文を書かせてもらう。
訪問は会期初期の7月土曜日AM。当展は日時指定の完全予約制で、アサイチで予約しスンナリ入館できた。会場内も混雑はなく、優雅に鑑賞できてよかった。
1階展示室は、まず庵野氏に影響与えた昭和中期~後期のTV番組映像や特撮番組のキャラ、メカなどの絵画、模型から始まる。
正直申して、私がいちばん長く留まったのはこの部屋だ。
特に多画面モニターで映されるなつかし番組映像は、そのすべてを確認し悦に入った。
まあこれこそが、同世代の優越感だもんね。
白黒からカラーまで、庵野氏が好きでよく見てた番組は、当然私もリアルタイムで見てたということ。
展示品は、ジェットビートル、ウルトラホーク、マイティジャックなどの模型が目立つからそれを微に入り細に入り鑑賞されるオヤジ客が多い。
私が注目したのは、成田亨のウルトラマン原画。これにはカラータイマーが描かれていない。この原画を見るのは2回目だが、カラータイマーは不要だとした成田構想を庵野氏がシンウルトラマンで実現したのは、まさに氏の成田愛、ウルトラ愛の結晶だろう。
次は、庵野氏自身の作品群だ。中学・高校時代の油絵がまず出てくる。
その中の1枚にドブ川が海に注ぐ下町の夕景を描いた絵があって、妙に惹かれてしまった。夕焼けの赤いトーンの風景画は、たぶんあのへんじゃなかろうかと私には想像できる。
そして、そのバックグラウンドとして浮かんでくるのが、ウルトラセブンとメトロン星人の対決シーンだ。
庵野氏がTVで見たのは小学1年のときだ。それから7~8年後、中学生の庵野少年が描いた地元の港夕景は、実相寺昭雄監督へのオマージュであったに違いない。
高校時代の8mmフィルム作品も大学時代のなりきりウルトラマン作品も、氏の特撮愛があふれていて、この人はシン・特撮マンなんだなあとつくづく思った。
2階へ上がると、アニメーター庵野としての展示が押し寄せる。
が、悲しいかな私はどのアニメも見ていないのでノーコメントだ。
ただ、この春に私が井上泰幸展で味わった感激を、庵野ファンなら絶対に味わえるのは確実だ。
そんな中、実写作品の「式日」映像が流れていて、うちの近所がバンバン出てくるのが驚きだった。
今は取り壊されて駐車場になっている場所にあった建物でのシーンを見て、庵野氏もここによく来てたんだなあと、感慨深かった。
と同時に、こんな映画があったのかと無知な自分を恥じ入るのみだ。
そして思うのは庵野氏の郷土愛だ。
これほど故郷を取り上げ、アピールし、映像化してくださってることに地元住人の我々はもっともっと感謝しなければならない。
「聖地」と呼ぶには情けないほど、庵野氏の故郷愛に応えていない田舎町ではあるが、なんだか誇らしくなってくるのも不思議なもんだ。
庵野秀明の過去・現在・未来というテーマで、すべてを出し切った感満載の大展覧会。
山口に引っ張って来た県美学芸員さんにも感謝です。