国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話
静岡県立美術館|静岡県
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エジプトの神々
古代〇〇展という展示会の場合、その歴史を知らないと雑貨屋で「変わったモノがあるな~」と思う感覚とあまり変わらなくなってしまう。今までエジプトについてのTV番組は幾つも観ているけど、カタカナの王や神々の名前が多すぎて頭に残らない。言える王の名前は「クフ王」と「ツタンカーメン」ぐらいだ。だから今回は「世界ふしぎ発見!」でお馴染みの河江肖剰先生のYouTubeで事前勉強してから臨むことにした。「古代エジプト展 天地創造の神話」についての解説動画もあるので、これから展示会に行く人は是非見てから足を運ぶことをオススメする。
展示物は古いもので紀元前2500年、新しくて紀元後100年。あたりまえだけど相当古い。石像、青銅、レリーフ、パピルス画など色々な形状で神々がお越しになっている。神といっても人間の形をしているものだけでなく、顔がハヤブサ、ライオン、トキ、ヒヒなど様々。会場では山犬の顔をした『アヌビス』という神がアニメーションで時折解説をしてくれる。これが結構分かりやすくて、いろんな神がどうしてできたか、エジプト人の死生観などの概略を把握することができた。ちなみに案内人『アヌビス』は元々ミイラを食い荒らしてしまう厄介者の山犬だったが、いつしか信仰の対象になりミイラを造る神となったらしい。菅原道真ではないけれど、恐怖対象を逆に神にしてしまうという発想は世界共通なのだろう。
私のお気に入りは『バステト女神座像』。女神といっても、どこからどう見ても「ネコ」。キリっとした顔立ちでありながら愛らしさもある精巧な青銅像だ。出品リストには前610~前595年頃ネコ2世時代の作品と書かれており笑ってしまったが、王の名前とは関係はない。『バステト』は初め雌ライオンの姿で表されていたが、同じく雌ライオンの顔を持つ『セクメト』の進化系(?)で、ネコに姿を変えて出産の神となった。ライオン顔の『セクメト』も女神だが、こちらは炎の息を吐く殺戮の神。敵国に疫病を流行らせるという技も持っているとのこと。転じて疫病の神となったので、この時期お参りは欠かせない。今回2m級の『セクメト』が2体来ているのでご利益を期待したい。
それから一番ショッキングだったのは人と昆虫が合体した高さ40cmぐらいの石像『創造の卵を持つスカラベとして表現された神プタハ』である。人に見えたのは『プタハ』という神で、ライオン顔の『セクメト』の夫。穏やかに目をつぶった小さな顔の下にある体はスカラベ(フンコロガシ)という異様な石像ではあるが、現代アート作家の作品と言われても納得するクオリティだ。とても紀元前700年前に作られたとは思えない。恐らく神を崇拝するためのものだろうが、作者が美しさとグロテスクを追求しながら丁寧に石を削っている様子が想像できる。
エジプト史というと「興味はあるが難解そうで無理!」いうイメージだったが、神々をキャラクターとして覚えることから始めれば、もっと親しみが持てるかもしれない。また、エジプトだけでなく世界の神々と対比してみたら、違いや共通点が見えてきて更に面白くなりそう。
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