3.0
夢二の魅力を二分する表現的差異
竹久夢二の作品はしばしば目にしていたものの、彼自身の来歴や作品にじっくり触れる機会はそれほどなく、夢二展を銘打った展覧会は今回が初めて。本展ではまず、竹久夢二の作品に対して、印刷物などで見るより全体的に粗く暗い印象を抱いた。
雑誌などの挿絵のように紙面デザインの一部をなす作品と油彩やスケッチなどの絵画作品には、もちろん共通して夢二的なしなやかさが漂っているが、その両者には感覚的な隔たりがあるように思えた。可憐な美しさ漂うデザインと荒々しく寂寞感漂う肉筆、というふうに。どちらかといえば前者のような作品で竹久夢二的魅力を認識していた私としては、今回の展示の目玉である油彩画には魅力を感じられなかった。それが個人的には衝撃で、同じ作家でも媒体によって表現の魅力に差異が生まれてしまったようだった。もちろん、これは個人的な嗜好の問題ではあるのだが。
比較的「仕事」として描いていたと思われる挿絵のようなデザイン的作品と実生活の反映とも想像される絵画作品。私自身はそうした夢二の「仕事」のほうが好みだったのだろうと気がつくと同時に、彼の人間関係や人生においての「描く」こととは、つまり「デザインされたもの」のようにはいかないといことが投影されているのかもしれない、とも思った。