4.0
エネルギーが溢れかえっている、今年は当たり年かも
TARO賞は「岡本の精神を継承し、自由な視点と発想で、現代社会に鋭いメッセージを突きつける作家を顕彰するべく設立されました」という現代美術の公募展。展示できるものなら何でもありです。立体も平面も写真も映像もありで、それらを組み合わせたインスタレーションもOK。昨年の第26回は珍しく大賞とかがなく、特別賞4点だけで少し寂しかったが、今年は大賞の岡本太郎賞と岡本敏子賞がそれぞれあって、特別賞は10作品と珍しい感じです。
岡本太郎賞を受けた、つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》はダンボールで作った格子状の部屋を組み合わせた「団地」をさらに組み合わせた巨大なタワーです。その部屋ごとに小さな冊子が入っていて、それを読むことで鑑賞することになると思われる。ちょっと物量に圧倒されます。岡本敏子賞は三角瞳《This is a life. This is our life.》。4mの立方体のなかに、ポリエステルの半透明な白い布が13枚か14枚ぶら下がっている。その布に人の顔が見た感じでは8×9個あって、よく見ると刺繍です。つまり最大1000人の顔が並んでいる作品。穏やかな顔から感情丸出しの顔までいろいろある。
一方、なんだかともかく大量に押し寄せてくる作品もいいのですが、これだけ熱量と物量があると、かえって1点で勝負的な作品が印象に残った。特別賞の小山久美子《三月、常陸国にて鮟鱇を食ふ》が◎。茨城の漁港の朝焼け風景をパノラマ風に描いた作品で、そんな現代の風景のなかで江戸時代風鎧兜姿の方々が鮟鱇を解体して、鍋をいただいているという作品。
このほか、いろいろあって楽しめます。一方で、気になるのは選んだ理由です。岡本太郎賞と岡本敏子賞には審査員からの一言があるのですが、ほかは何もないので、どう評価していいのか分からない作品もある。審査員は5人いるけど、発言が見えるのは2人だけ。ちゃんと説明してほしいなあと思う今日この頃です。