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「シン」ならではの、広義の日本画展
アートフェア東京で見かけて気になっていた三瀬夏之介さんの作品が出展されていること、現代作家の描く日本画に興味を持ち始めたこと、をきっかけに行ってきました。
まずはお目当ての三瀬作品ですが、展示スペースの両側面を飾る壁画が大きすぎて、近くに寄っても、遠くから見ても、何を描いているのかわからない。吊るされた日本地図みたいな作品は、たぶん一般的な意味での日本画ですらない(笑)
なので、作品が置かれた空間とともに、ひもの結び目とか、絵の具の飛び散り方とか、細部の工夫を楽しみました。
他にも気になった作品が多かったので感想をいくつか。
加山又造の「黒い薔薇の裸婦」はとてもモダンで、薔薇のレースもまったく古びた感じがしない。人物を描くイメージがなかったので、意外な作品でした。
久松知子の「日本の美術を埋葬する」は大勢の美術関係者が五頭身くらいで描かれていて、人物当てをするのが楽しかった。センターには辻惟雄先生が自著を持って立ってます。
天野喜孝の四天王はそれぞれが巨神兵のようで、しかも少し高めの位置に展示しているので、見下ろされている感がハンパない。特に「多聞天」が怖い!
谷保玲奈の「蒐荷」は朽ちていく紫陽花を描いていて、この状態を描く作家がいた!とうれしくなりました。というのも、紫陽花は花を落とさずに形を保ったまま枯れていくので、街路樹で見るたびに寂しい思いをしていたんです。だからこそ、気づいてくれてありがとう、という感じです。
永沢碧衣の「山景を纏う者」は遠くから見ると熊だけど近づくと山になる、という楽しいけど静けさを伴った作品。東北か北海道の人にしか描けない作品だろうと思ったら、ビンゴ!秋田の人でした。こういう作品を見ると、山と熊は不可分なんだなぁと強く思いますね。
今回の展示は大きめの作品が多くて、大きめ作品好きの私としては鑑賞自体がとても楽しかったです。どこかに細工があるに違いないと思ってあちこち見比べたり、寄ったり引いたり見る場所を変えたり、いろんなアングルで写真を撮ったり、存分に自由な鑑賞ができました。
13年ぶりの日本画展ということですが、西洋画好きへの配慮も欠かしませんね。コレクション展では、リヒター、ハマスホイ、モリゾといったポーラ美術館のスター作品がしっかり展示されていました(笑)