この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
このたびの建物改修の前後を比べてみると、一見して違いがわかる場所もあれば、わかりづらいけれども言われてみれば変わったことに気づく、という箇所もあるでしょう。本展では、美術館建物の改修工事という出来事を契機に生じる「前/後」をひとつの足がかりとして、さまざまな「まえ」と「あと」の現象や状況に着目します。例えば、経年によるものの変質や劣化、そして修復による対応は、作品や資料を収蔵する美術館では避けては通れない問題です。
また、広島の中心地に建設され、県の産業奨励館として知られていた建物は、被爆後にはヒロシマを象徴する遺構へと姿を変え、原爆ドームという愛称のもと、都市風景の一部となっています。都市を破壊し、人々に健康被害をもたらした核エネルギーは、その後、原子力発電のエネルギー源として世界に繁栄をもたらすとも信じられました。このように、歴史を振り返れば、いくつもの分岐点としての出来事や決断があり、変更や変化が起こってきたことに気づきます。
私たちは過去からなにを学び、どのような未来を見ているのでしょうか。旧約聖書によれば、かつて楽園で禁を破って知恵をつけ、そこから追放された人類の末裔(まつえい)は、いまなお世界のいたるところで諍(いさか)いを起こし、他者の生活を脅かすなど、さまざまな問題を抱えています。それでもなお私たちは、夢や希望を抱くことを忘れず、自らを癒し、ときに後ろを振り返りながらそれぞれの歩みで前へ進んでいくのではないでしょうか。
本展では、社会の変化やシステムにおける綻び、隠され葬り去られた過去や歴史があることを敏感に察知し、作品として発表してきたアーティストたちを取り上げます。彼らは、それぞれのやり方で出来事と真摯に向き合い、変転や変遷のあとさきを静かに想起させる、美しく力強い作品を発表してきました。これらの作品を通じて、さまざまな事象の「まえ」と「あと」とを想起し、変化の有無や差異を認識するのはもちろんのこと、さらにその背景や一連の顛末によってもたらされる功罪や意義を省察する機会となれば幸いです。
開催概要EVENT DETAILS
会期 | 2023年3月18日(土)〜2023年6月18日(日) |
---|---|
会場 |
広島市現代美術館
![]() |
住所 | 広島県広島市南区比治山公園1-1 |
時間 | 10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30) |
休館日 | 月曜日 |
観覧料 | 一般 1,600円(1,250円) 大学生 1,200円(900円) 高校生・65 歳以上 800円(600円) 中学生以下 無料
|
TEL | 082-264-1121 |
URL | https://www.hiroshima-moca.jp/ |
広島市現代美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
感想・評価 | 鑑賞レポートREVIEWS
あなたも感想・評価を投稿してみませんか?
感想・評価を投稿する
より詳しい鑑賞レポート 《600文字以上》のご投稿はこちらから。
ページ枠でご紹介となります。
鑑賞レポート《600文字以上》を投稿する
周辺で開催中の展覧会も探してみて下さい。
広島県で開催中の展覧会
出展作品・関連画像IMAGES

シリン・ネシャット《Land of Dreams》2019
Courtesy of the artist and Gladstone Gallery
© Shirin Neshat

オノ・ヨーコ《夢》2012

河原温 SEPT. 8, 1984 《Today》シリーズ(1966–2013)より © One Million Years Foundation

田中功起《everything is everything》2005-2006

若林奮《DOME》1988

石内都《The Drowned#2》2020 Courtesy of The Third Gallery Aya © Ishiuchi Miyako

コウミユキ "Stand Up!" Series「駆け出した犬、浮遊する象」2019 瀬戸内国際芸術祭2019/小豆島・三都半島 での展示風景

髙橋銑《Cast and Rot No.13》2021 Photo: Ichiro Mishima Courtesy of LEESAYA

左:竹村京《修復されたG.美術館の電球》2019
右:竹村京《修復されたT.家の電球》2019 Photo: Shinya Kigure