3.0
時間やら空間やら
目が印象的と言いますか、ちょっと怖さを感じました。
個人的にはディエゴ・ベラスケス《青いドレスのマルガリータ王女》を模写しているところを後方から撮影している作品が好きです。
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田口和奈(1979年東京都生まれ)は、現在オーストリア、ウィーンを拠点に制作、活動をするアーティストです。東京藝術大学美術学部絵画専攻油画領域を卒業後、同大学院美術研究科で博士号を取得し、2010年には五島記念文化賞美術新人賞を受賞しました。これまで、アジアや欧州での個展やグループ展参加など、精力的な活動を行っています。
田口は、多重的な構造を持つモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった形而上の存在を見出そうとする制作を続けています。例えば、自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影する、プリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影をするといった重層的な手続きを経て生まれる作品には、写真でありながらも、長い時間をかけて画布に向かう絵画と同様の地平を見出すことができます。
また、田口の作品は、しばしば過去の美術作品の参照や、匿名のファウンドフォトや雑誌といった既存のイメージの応用を含みます。収集した過去のイメージから象徴を読み取ろうとする身振りは、アビ・ヴァ―ルブルグ(1866-1929)の「ムネモシュネ・アトラス」からの影響も受けています。アーティストは、それらのイメージの中にある複数の時間軸や身体の断片から、記憶を生み出す星座的空間の兆しを掬い取り、そこに節制と偶然を招き入れるべく、時に修復し、時に自作の中へと再び迷い込ませるのです。
「A Quiet Sun」は、本展のために制作した作品群と、田口が収集するファウンドフォトを用いて編成されます。神話や匿名の記憶は、ゼラチンシルバーの中に息づく様々な身体の身振りや触覚からもたらされます。ギャラリーにあふれる強い自然光をそのまま用いながら、建築を発見し、空間を整え、レイヤーを与えてゆくような大胆かつ繊細な展示方法は、田口の写真制作における問題意識を異なる角度から解釈する試みでもあります。写真という身体(コーパス)が、溢れる太陽の中で移ろいやすい像を結ぶ時に、どのような光のしじまが見いだされるのでしょうか。
会期 | 2022年6月17日(金)~2022年9月30日(金) |
---|---|
会場 |
銀座メゾンエルメス フォーラム
![]() |
住所 | 東京都中央区銀座5-4-1 8・9階 |
時間 |
11:00~19:00
(最終入場時間 18:30)
|
休館日 |
7月14日(木)、8月17日(水) ※エルメス銀座店の営業時間に準ずる |
観覧料 | 無料 |
TEL | 03-3569-3300 |
URL | https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/220617/ |
3.0
目が印象的と言いますか、ちょっと怖さを感じました。
個人的にはディエゴ・ベラスケス《青いドレスのマルガリータ王女》を模写しているところを後方から撮影している作品が好きです。
4.0
写真作品なのだが、自分で作った作品を写真に撮って、それに手を加え、それをまた写真に撮る等、多重に重ねられた手順の時間も孕む。
きっちりと組まれたパーティションに、ゆったりと展示されたモノクロームの小型の作品は静かに佇んでいた。小型ゆえ凝視するのを強いられるが、大きな声ではない囁くようなイメージが作品世界に誘っていた。
4.0
マン・レイやシュールレアリスムとの関連を思った。モノクロームの、静謐な時間と空間の中にいると、なつかしいような少し不気味なような、不思議な感覚をおぼえた。
銀座メゾンエルメスのギャラリーとミニシアターには、非常に優秀なキュレーターがいるのだと思う。毎回、素晴らしく興味深い企画ばかりなのだが、それだけでなく、配布資料の充実にもいつもびっくりしてしまう。とても内容の濃い丁寧なつくりで、これで無料なのだから贅沢な喜びである。感謝しているし、これからもずっとずっと期待している。
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