5.0
美術館をはみ出す野外インスタレーションも楽しい
正直、1回では見切れないなあ、という感じです。鴻池さんの個展は2009年に東京オペラシティアートギャラリーで拝見した「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」以来、できるだけ見に行くようにしているのですが、毎回、過去の展示にもあった作品が拡大再生産されている感じで、なかなか楽しい。例えば会場へ向かう階段の踊り場にある「アースベイビー」は2009年に制作された作品ですが、今回、修復して飾られています、過去に見た作品が、新しい見せ方で、またちょっと違った衝撃があるのでした。この辺にはひとりの作家を見続ける楽しみがある。
会場に入って、最初の展示は、アール・ブリュット的な国立療養所・菊池恵楓園(熊本県合志市)の絵画クラブ「金陽会」のメンバーによる作品97点と静岡県立美術館のコレクションから選ばれた29点がガラスケースの中に並んでます。アール・ブリュットとプロの作品が、渾然と並んでいて、見ていくうちに、アール・ブリュットがプロの作品に見えてきたりするのが、楽しいところ。その後は鴻池作品や鴻池によるいくつかの共同プロジェクトが並んでます。そして、その合間合間に動物の糞の模型が並ぶという構成です。そして展示室の間にロープや毛糸が張られ、それに触れながら鑑賞する、という仕掛けもある。
そして最後に、野外作品を見に、裏山へ。静岡県立美術館は日本平という丘陵の麓にあって、裏山はわりと鬱蒼とした森になっている。静岡県立美術館側から山を越えていくと太平洋が見えてくる。そして太平洋側には徳川家康ゆかりの久能山東照宮がある。まあ、そういった森の中に5つの作品が配置されている。経路は途中から舗装路ではなくなり、尾根を歩くようなところもあるし、かなり急な坂を延々と下りるところもあって、そこそこ楽しめます。まあ、暗くなる前に戻ってきた方がいいですね。というわけで、2時間ほどいたのですが、全部は見きれませんでした。諸々といい体験でした。
今回の展示は高松市美術館で開催された「みる誕生 鴻池朋子展」の続きだそうです。静岡の次は青森県立美術館に巡回するらしいです。青森のも見てみたいと思う今日この頃です。