5.0
「意味」で見ていてはつまらない?
ヤン・ヴォー展は、神秘的な光や艶めかしい美しさの身体、鏡に囲まれた空間など、展示室全体が妖しい雰囲気に満ちていた。それに、ヤン・ヴォーの作品には誘惑的なものがある。
展示解説がついていないことで作品の意味は隠されているが、実際ヤン・ヴォーの作品はさまざまな秘匿のうえに成り立っているような気がする。木箱に覆われたシャンデリアや液体で塗り汚された鏡、文脈もわからないまま突如として並べられた文書など、いかにも意味ありげな作品や空間だが、全容がわからない。
それでも、いやだからこそ、とても引き込まれた。意味や理性で見るというより、情念や欲望で作品を見ることができた。隠された作品は、それを見て意味を付与しようとする私をこそ隠してしまったのではないだろうか。醒めた目で物語を傍観するのでなく、その只中で揉まれる人間として、世界の汚らわしさと恐ろしさ、そして魅惑的な美しさを経験していたのだと思う。
反論はもちろんあるかもしれないが、ヤン・ヴォーの作品は「意味」で見ていてはつまらないものになってしまうかもしれない。