5.0
生き生きとしたカラフルな版画に秘められた、浅野竹二氏の愛に溢れる万物称賛の秀逸な展覧会
川瀬巴水を彷彿とさせる数枚の東京の風景版画から始まった趣深い作品は、当時の日本の情緒が上手く表現されています。
しかし、その後の展示は、驚く程変化します。市井の生活をあらわした単色摺の版画は、名もなき人々の日々の暮らしを鋭いシンプルなタッチで仕上げられていて、私達の幼い時や、父、母、祖父母達が生きた時代を思い返し、心が動かされました。
その後の作品は又々変化していき、カラフルな彩りの特徴あるフォルムで、人、動物達が生き生きと表されています。どの作品にも作者の穏やかな人柄が表されていて、万物に向けられる温かな彼の眼差しを通して、人間や動物の生きる楽しさ、悲しさ、儚さが垣間見れます。
色の美しい、大胆かつ簡潔なフォルムの作品群は、圧巻の一言です。展覧会会場のガラスケースに展示してあった小鳥のデッサンを見た時、この様なきちんとした基礎があってこそ、大胆な創作版画が創られたのだと納得致しました。是非、ご観覧をお勧め致します。