5.0
美しく恐ろしい展覧会
本展覧会では、「子どもへのまなざし」をテーマに、3つの章に分けて6名の作家の作品が展示されていました。
第1章「愛される存在」
新生加奈の作品では、母親の慈愛に満ちた「まなざし」と寄り添う子どもの幸せそうな「まなざし」が、心を温かくしてくれました。大久保綾子の作品では、極端にデフォルメされた超人のようにたくましい母親の「まなざし」と、これに守られ絶対の信頼を寄せている子供の「まなざし」が、同様にほのぼのとした幸せを与えてくれました。
第2章「成長と葛藤」
「思春期の葛藤を表現した作品群」とのことですが、第1章とは打って変わって恐ろしい絵ばかりでした。豊澤めぐみが描く思春期の子どもたちの鋭い「まなざし」、志田翼が描く子どもたちの無表情で無機質な「まなざし」、こんな眼で見られたら親たちは耐えられないのではないのでしょうか。「子どもへのまなざし」ではなく、大人に向けた「子どもの反抗的なまなざし」ばかりです。でも、いずれも驚くほどうまい絵で、怖さを忘れて見入ってしまいした。
第3章の「生命のつながり」
山本靖久が描くのは人間と動物たちの交歓を描いた壮大な神話的絵画で素晴らしかったです。でも、人間の表情がぼんやりしていて、どんな「まなざし」かがわかりません。木原正徳が描くのは人と自然が渾然一体となった抽象的なコラージュ作品で、水、光、花、人間が絡み合った美しい輝やきが印象的です。いずれも素晴らしい絵画ですが、テーマの「子どもへのまなざし」とは外れています。
以上、6人の作品の感想を羅列的に述べました。テーマの「子どもへのまなざし」とは合わない絵がありましたが、どれも素晴らしく、楽しめた展覧会でした。