4.0
盛り沢山でお腹一杯に…
最初に目にするのはロビーに置かれた白隠慧鶴筆の達磨像の大看板です。チケットにも描かれるこの達磨像は前期展示で実物を見ることは叶わなかったのですが、知らない方なら現代のイラストレーターの作品と説明されても疑わないでしょう。また芸術新潮の表紙にもなってたように思います。ギョロ目の上に濃い黒の線…これって私が化粧するときのアイラインです。
平成知新館の3階からスタートする展示は別格南禅寺をはじめ京都五山など禅寺のお写真から始まり、禅宗の成立では、達磨大師、歴代祖師、臨済義玄の彫像や肖像画です。雪舟筆の慧可断臂図のお二人の険しい表情は何人も近寄り難く、達磨大師の鋭い眼に私の心は見透かされてるようで口を閉じてられても「喝!」の大声が頭の中に響きます。臨済禅の導入と展開では、国宝の無準師範筆の額字「普門院」は上手には思えなくて、これも国宝の後醍醐天皇宸翰御置文を見ては大河ドラマ太平記の片岡孝夫の顔が浮かび、隠元禅師が使用の金銅製洗面器を見て「何これ?」と我が家は黄檗宗だというのに訝しむ、不遜な私です。戦国武将と近世の高僧は、生々しい伊達政宗像にビクッ!とさせられ暫くは背中がゾクゾクでしたが、好きな沢庵和尚の円相図や白隠禅師の達磨像と観音十六羅漢図の愛くるしい虎に以前から観たかった関羽像、大好きな仙厓禅師の寒山拾得などの書画で心が和みました。禅の仏たち では、京都鹿王院の十大弟子立像は生きてられるようで、中国の仏師范道生作の羅怙羅尊者像の両手で胸を割き中の仏を見せる姿に、顔が縦に裂け中から十一面観音の面相が覗く宝誌和尚像を思い出しまたまた背中がゾクゾクです。禅文化の広がりでは、油滴天目茶碗、長谷川等伯の竹林猿猴図や狩野山楽の龍虎図の屏風に伊藤若冲の竹図襖など国宝や重文が多く展示されてます。
展覧会には雲水さんでしょうかお若いお坊さんも鑑賞されていて、自宅近くで見かける托鉢姿とは違って、その立姿は少しお洒落で凛々しくもありました。ゴールデンウィーク明けの平日だったこともあって思いの外ゆったりと、また盛り沢山の展示品でお腹一杯になる2時間半を過ごさせていただきました。ちなみにくじで出会う禅の言葉は「本来無一物」、でも妄想は捨てられそうにないです。