この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
わたしたちの祖先はなぜ、自らの身体を過酷な環境においてまでも危険な拡散を試みたのだろうか。
約10万年前にアフリカを出発した人類は4万8000年前頃からアジアにまで広がった。最先端の人類進化学研究を担う海部陽介は、人類のアジア拡散ルートについて、ヒマラヤ山脈を挟んで南北に別れた人類が、まるでアジア全域に大回廊を築くかのように西から東へと横断し、1万年後東アジアで再会したという仮説を提唱している。さらに、東アジアで再び出会った人類は、今度は草舟を作って海に乗り出し、人力渡航で日本まで辿り着いたとも考えているのだ。
また、人類は長い拡散と遊動生活のなかで、身体を飾る装飾具、死者を弔う埋葬や火葬といった儀式、洞窟の壁の描写など、多くの創造活動の痕跡を残している。氷河期の過酷な環境における純粋な生存への欲望とは別の次元で、なにか身体を媒介とした表現活動への根源的な渇望があったのではないだろうか。そして、その身体表現への渇望は、地球上のあらゆる場所へと拡散せざるを得なかった人類の遊動することへの欲望と通低していると思われるのだ。
今回出展する3名の作家は、人間の「身体」についてそれぞれ異なるアプローチで活動しています。黒宮は人間の輪郭を描きながらも、滲みや暈かしを用いることで、むしろ身体そのものの存在を曖昧にしてゆく絵画表現を展開しています。シンメトリーの画面が宗教的な要素を連想させると同時に、明滅する液晶画面上のイメージのようでもあり、観る者の感覚を強かに揺さぶります。二藤は、自身が直接世界に触れることを軸とした、新たな彫刻表現の可能性を追及しています。手触りや質量といった人や物質が存在することへの問いが、一見ユーモラスに、かつ切実に私たちの目前に投げかけられます。自らの身体を確固たる表現媒体とする若木は、世界各地のマラソンを走破することを実践の一つとしています。その記録映像には、作家なのかアスリートなのかといった議論が最初から吹き飛ぶような、祝祭性を帯びたしなやかな魅力があります。
本展覧会では黒宮菜菜、二藤健人、若木くるみが原初的な欲望である「遊動」をテーマに作品を発表します。すべての人々にとって、人類の「のっぴきならない」欲望の根幹を探る旅となることでしょう。
開催概要EVENT DETAILS
会期 |
2017年5月25日(木)~2017年7月2日(日)
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会場 | 京都芸術センター Google Map |
住所 | 京都府京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 |
時間 |
10:00~20:00
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休館日 |
不定休 年末年始 |
観覧料 | 入館無料 展覧会は入場無料。公演はそれぞれ料金が異なります。 |
TEL | 075-213-1000 |
URL | http://www.kac.or.jp/events/21126/ |
京都芸術センターの情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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