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【アートな映画】ゴヤの名画と優しい泥棒(2020・英)

ゴヤ―ウェリントン侯爵の肖像(1812-1814)ロンドン・ナショナル・ギャラリー

2020年に東京と大阪で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で初来日したゴヤの肖像画にまつわる実話をもとにした映画。


絵画ファンなら知っている人も多いとは思うのですが、お恥ずかしながら私はこの絵画が盗難にあっていたことを知りませんでした。


事件の発端は1960年代初頭。イギリスのオークションでこの絵をアメリカの美術コレクターが14万ポンドで落札したことから。

描かれているのはナポレオンを打ち負かし、初代ウェリントン侯爵となったイギリスの英雄アーサー・ウェルズリー。

この英国史上重要な人物の絵画が海外に流出することを懸念したイギリス政府とウォルフソン財団は同額でこの絵を買い戻し、1961年にロンドン・ナショナル・ギャラリーでこの絵を展示。

しかしながら、公開後わずか16日でこの絵は誰かに持ち去られてしまいます。


当然、イギリスでは大きな話題となり、事件の翌年に公開された映画『007 ドクターノオ』では、国際犯罪組織スペクターの幹部、ドクターノオの自宅に飾られているシーンがあります。

(このシーンは実際、今回の映画のラストにも使われています)


事件から4年後、盗難事件の犯人として自首したのはニューカッスルに住む元バスの運転手、ケンプトン・バントン。

身体障害でバス会社を首になり、年金生活であった彼はイギリス国営放送(BBC)の受信料が払えない老人たちがいるのに、たった一枚の絵のために膨大な資金を費やすことに腹を立て侯爵誘拐を試みたのだとか。


この映画の製作を持ち掛けたのはこのケンプトン・バントン氏のお孫さん。

お孫さんが生まれる前にケンプトン氏は他界していたため、本人から直接聞いたわけではないようですが、ケンプトン氏の次男で、事件にも関わりのあるお父様からの話を聞き思いついたらしい。


貧富格差、人種差別なども交えながら、ユーモラスにかつ痛快。そして矜持に富んだ映画になっていました。

実はこの事件にはとあるウラがあるのですが、それはネタバレになるので言及を控えます。

映画としては小品の部類に入るのでしょうが、映画好き・絵画好きにはたまらない作品でした。


モデルとなったウェリントン侯爵は、この絵を親戚の人にあげてしまったそうですが、この映画を見たらきっと絵を手放す気にはならなかったかもしれません。


プロフィール

夢司
好奇心旺盛な実年男性(死語?)。
映画と絵画が好きで最近は「絵画や画家にまつわる映画」と西洋美術史に関心が高まっています。
時間的・金銭的余裕はあまりないので、美術鑑賞はほとんど関西。
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