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謎解きみたい!シュルレアリスムと日本「シュルレアリスム宣言」100年

絵を見るのが好きである。

例によって、何の下調べもせずに訪れた板橋区立美術館。

入って直ぐ目に入るのは、東郷青児「超現実派の散歩」 阿部金剛「Rien No.1」 古賀春江「鳥籠」

日本のシュルレアリスムの先駆者として完成度の高い3点。

「あなたは、どれがお好き?」と言わんばかりに並んでいる。

私は、「Rien No.1」

空に浮かぶつるっとした白いものは、雲?飛行物体?お化け?吸い込まれそうな穴?

すごく気になる。

「Rien」は、フランス語で、「何もない」と言う意味らしい。


その先には、福沢一郎の「他人の恋」

「昔、群馬県立近代美術館で見たよね。覚えている?」と、夫が言う。

全く、思い出せない私。

群馬県立近代美術館には、子ども向けのワークシートがあった。

「これは、ちょっと不思議な絵。いろんな人がいて、それぞれ何かしているけれど、何だかわけがわからない、それがこの絵のおもしろいところ。でも、じつはヒントが絵のなかにある。左下の板べいに外国語が書いてあるけれど、これはフランス語で・・・・」と続く。

当時、夫は、子ども向けなのに、ワークシートの投げかけが意味深だったと言う。作品名も「他人の恋」だし。

情報を手掛かりにして、知的に謎を解いていくような絵も面白いけれど、私は、ちょっと苦手。

理屈抜きで、自由気儘に妄想したいのだ。




だから、三岸好太郎の絵に引き寄せられる。不自然に置かれた貝殻、顔と足を布で覆った裸婦。

遠くの海はもとより、砂浜も貝殻も裸婦も、写実的には描かれていないのに、存在感は半端ない。

生きている絵。そして感じる光と温度。「海と射光」

初めて、三岸好太郎の「飛ぶ蝶」を見た時の感動を思い出した。

31歳で客死とは、もったいない。

この展覧会、なかなか見ごたえがあって、作品にぐいぐい引き込まれて行く。


展示物の中には、詩画集もあり、ショーケース越しに書かれている詩を読んで驚いた。

良いのである。瀧口修造と言う人の詩が。

絵よりも詩に引き込まれた。

私の一番好きな詩人は、西脇順三郎。

中学生の時、「天気」と言う詩に出会って、虜になった。

(覆された宝石)のような朝・・・で始まる、たった三行の短い詩。

それを読んだとき、目の前に光が差し込むように情景が広がった。

シュルレアリスムという言葉を知ったきっかけだ。

しかし、難解なシュルレアリスムは、西脇止まりとなった。

これをきっかけに瀧口の詩も読んでみよう。



どの作品も見ごたえがあったが、渡辺武の「風化」と石田順治の「作品2」が気に入った。

絵が、瑞々しいのだ。22か23歳の頃に描いた作品だ。

しかし、渡辺は29歳で、石田は24歳で亡くなっていた。

戦争で多くの若い命が失われたことに気づかされる。

ちょっと複雑な気分で鑑賞を続けていると、元画商と名乗る老人に声を掛けられた。

この展覧会で、見るべき絵を教えてくれると言う。

老人の一押しは、矢崎博信の「時雨と猿」

この絵は、シュルレアリスムに日本的なものを取り入れたオリジナリティーのある作品とのこと。

家に帰ってネットで調べてみると、俳諧におけるシュルレアリスムの幽玄を絵画に求めた作品であると書いてあった。


老人によると、日本のシュルレアリスムは、真似ばかりなのだそう。

なかでも、北脇昇の「独活」は、イヴ・タンギーの真似だと一刀両断。

やせっぽちの人間みたいな「うど」が、会話しているようなダンスしているような絵で、動きもあり、完成度が高い絵のように見えたが。

老人は、スマホの操作を何度も失敗しながら、一生懸命イヴ・タンギーの絵を見せてくれる。

隣に展示されている米倉壽仁の「ヨーロッパの危機」は、絵が今一つだが、ドクロのように見える古地図に国名が書いてあるところが唯一良い点だそう。なかなかに辛口である。

この絵は、1936年の作品だが、その3年後に第2次世界大戦が勃発しているので、今なら、YouTube界隈で、予言の絵としてもてはやされそうだ。

もっと話を聞きたいくらい面白かった。一期一会とはこういうことか。


板橋区立美術館の展覧会は、4月14日で終わるが、次は、三重県立美術館で見られるようだ。

今回も楽しかった。

今夜は、西脇順三郎の詩論集を読み返そうかな。


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