この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
作品に宿った梅津個人の想像力や無意識は多くの人を巻き込み、巻き込まれながら不揃いで不気味な秩序をワタリウム美術館につくりあげる。花粉を媒介する梅津自身の中にも複数の花粉が降っている。
近年の現代アーティストの中で、梅津庸一ほどその活動全域を把握しづらい作家はいない。細密画のようなドローイングや点描画のような絵画作品、自身を素材としたパフォーマンスを記録した映像作品、陶芸作品から、キュレーション、非営利ギャラリー運営など、その領域は多岐にわたっている。
本展は2004年から2021年までの作品を梅津自身がキュレーションしていくが、回顧展ではない。タイトルにある「ポリネーター」は植物の花粉を運んで受粉させる媒介者という意味をもち、梅津自身の立ち位置をたとえて選んだ言葉だ。繊細でフラジャイルなものということで、アートと花粉は似ているかもしれない。それを世界中に広げていく。実際この2年、私たちの世界は微細なウィルスによって麻痺状態に追い込まれ、新たな扉を開かざるを得ない状況に来ていることを考えれば、花粉のようなアートが世界を席巻しても決しておかしくはない。
実は、ワタリウム美術館も「花粉」との縁が深い。1990年開催の第一回展「ライトシード」では、ゲスト・キュレター、ハラルド・ゼーマンが目の覚めるような黄色のたんぽぽの花粉(ヴォルフガング・ライプの作品)を真新しいワタリウム美術館のフロアに敷き詰めた。日本の現代美術にとってそれは衝撃的な出来事だった。
また翌年1991年の「ヨーゼフ・ボイス展 国境を超えユーラシアへ」では、ボイスの「ポーレントランスポート1981」 というアクションを展示した。ボイスは自身の作品を自分で運転するトラックに乗せて運び、ポーランドのウッジ美術館に寄贈した。第二次大戦中この「ポーレントランスポート」というドイツ語がポーランドへの輸送=死の道を連想させたが、ボイスはそのあってはならない歴史に〈再生〉の行動を加えた。この「ポーレン」と言うドイツ語には「ポーランド」と言う意味と同時に隔たりを超え軽やかに運ばれていく「花粉(ポーレン)」が掛かけられていた。
梅津は言う、「美術とはなにか。そして芸術の有用性や公共性とはなにか。それはわかりやすい希望やとっつきやすいビジョンの提示にあるのではなく、一見すると有用性や公共性など感じられないほど入り組んだ悪い夢のような世界にこそ存在する」と語っている。いつも梅津の作品は悪い夢のようでいて、とてもロマンチックなポエムのような空間を有している。
本展ではさらに次のステージへと移り、楽しみな未知の空間となるはずだ。
開催概要EVENT DETAILS
会期 | 2021年9月16日(木)~2022年1月16日(日) |
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会場 | ワタリウム美術館 Google Map |
住所 | 東京都渋谷区神宮前3-7-6 |
時間 |
11:00~19:00
(最終入場時間 18:30)
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休館日 |
月曜日 12月31日~2022年1月3日 ※ただし9月20日、2022年1月10は開館 |
観覧料 | 大人 1,200円 学生(25歳以下) 1,000円 【ペア割引】 大人2人 1,800円 学生2人 1,400円 |
TEL | 03-3402-3001 |
URL | http://www.watarium.co.jp/ |
ワタリウム美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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