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千葉市美術館の「木版画の神様 平塚運一展」を観て来ました!
9月8日に千葉市美術館の「木版画の神様 平塚運一展」を観て来ました。誰もが知る画家・絵師の他に、私は5年ほど前から自分の美術鑑賞知識の幅を広げるために、「実力はありながら埋もれた画家・絵師」の作品を自ら編集作成している「美術展一覧表」でスケジュール化し、できる限り足を運んで観る様に心掛けています。
平塚運一という画家も、今回の展示会まで知りませんでしたが、美術館のホームページの「木版画の神様」というフレーズに誘われ、千葉へ足を運びました。
そして、今回の鑑賞を私なりに纏めると、特筆すべきポイントは5つ。
1つ目は、木版画というと絵師と摺師での共同作業が殆どですが、彼は何と自画・自刻・自摺の創作版画家であること。
2つ目は、自ら彫刻刀やノミの効果的な使い方を編み出した技法書を後世に残し、あの棟方志功らの後進を育てた先生であること。
3つ目は、関東大震災直後の風景を見て、北斎や広重や清親が好んで描いた美しかった風景を何時までも残して置くことを決意し、制作の動機が固まったこと。実はこの直後に描いた絵を見た竹久夢二から褒められたとの逸話もあります。
4つ目は、戦後、長らく日の当たらなかった創作版画は進駐軍に見い出され、版画国ニッポンの画家たちが活躍する担い手となったたこと。
5つ目は、67歳の時にアメリカ人と結婚した三女の子供たちの様子を見るために渡った筈のアメリカで、好奇心一杯に制作に励む彼の作品をアメリカは温かく迎え、版画教室等での指導者となります。そして何とアメリカでの生活が30年にも及ぶことになります。6つ目は、101歳まで版画制作(絶筆も展示されています)していたこと。
最期は102歳で自らの展覧会に出席し、誕生日の翌日に逝去します。
本当に探求心旺盛で、後世への指導と思いやりのある素晴らしい画家であり、「木版画の神様」と称される所以が良く理解できた展覧会でした。
私の好きな画家・絵師のリストに、また一人、大きな存在感のある人が追加されました。
今、東京都美術館では「没後50年 藤田嗣治展」が開催されていますが、藤田も「私の絵や声を後世まで残したい」と同じ様な思いで、最期まで制作していたそうです。
「木版画の神様 平塚運一展」は本日9日で幕を閉じます。