4.0
生涯にわたり静物画を描き続けた画家の終わりなき変奏
作品の主題がほぼ静物画と風景に限られ、サイズの小さなものが多い。
画家はお気に入りの瓶や水差し、縞模様の器などのモチーフを並べ替えて繰り返し描いている。器の配置やそこに落ちる光の量を調節して、テーブルに器が投じる影や色彩の僅かな違いや変化を捉えて、目の前の静物と真っ直ぐに向き合い、常に新しい発見をしてそれを表現しようとしたところに驚きと凄さを感じた。
油彩画と水彩画では全く印象が異なる。油彩画は黄色や白や赤や茶系で描かれ全体的に温かみがあり調和した色彩が心地良い印象を与える。また、水彩画は色の濃淡だけで描かれており、輪郭線はなく淡いブルーやグレー系の配色が綺麗でやんわりとしたにじみもあり水墨画の様な感じがする。
晩年になるほど、物の形が簡略化され机や壁の区別はなくなり、輪郭線や境界線や影は描かれなくなっていき、静物を見つめ続けると最後にはシンプルな形と色彩の面だけが残るのだろうかと思うほど、抽象画に近づいていっていて面白いなと思った。
その他、エッチング等の作品も多数あり、精緻な描写が素晴らしかった。